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風が吹くときのTSのレビュー・感想・評価

風が吹くとき(1986年製作の映画)
3.6
【画風とのギャップが衝撃的】77点
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監督:ジミー・T・ムラカミ
製作国:イギリス
ジャンル:アニメ
収録時間:85分
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 レイモンド・ブリッグズ脚本のアニメ。あの柔らかいタッチの絵がどんどん悍ましくなっていくのには気が引けてしまいます。イギリスの田舎町に住む夫婦二人が、核兵器の被害をまずは乗り越えるのですが、そこからが凄まじいです。とある段階まではこの夫婦は元気に乗り越えようとするのですが、とあるカットから急転して凄惨な状況が描かれています。実写映画などで核兵器の恐ろしさを伝えるものは多くありますが、このような柔らかいタッチの絵からのアプローチは珍しく、貴重だと思えます。

 夫のジムは勉強熱心であり、ラジオから聴ける政府の情報をもとにいろいろと考えていきます。その口うるささに妻のヒルダも呆れてる始末。そして、核ミサイルがいつ飛んでくるかわからないという状況になった時に、ジムは政府のマニュアル通りに核シェルターを作ります。この核シェルターがまたなんとも言えない粗末なものであり、こんなもので乗り越えられるのかと疑問に思ってしまいます。まあ一応この核シェルターのお陰で即死は免れます。その後、荒廃した家の中で夫婦は生きていこうとするのですが。。

 ジムは勉強熱心であるため、本当によく話します。ヒルダがネガティブな発言をしても慰めていきます。非常に頼もしい存在といえそうですが、彼も生き物。苦しくなってきた時は口数が減ってしまいます。明らかにジムの口数が減り、画風も険しくなってきたあたりが今作のハイライトなのだと思います。直接的な戦争描写はないにせよ、非常に恐ろしくそれらを間接的に描写していると思います。政府の助けは来ず、ただただ死を待つばかりの雰囲気がそこら中に漂っています。

 ジャケットなどをみたら温かいアニメに見えますがそんなことはなく、核兵器と戦争の恐ろしさをそのギャップで伝えている、なんとも恐ろしいアニメと言えそうです。
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