Jun潤

パルプ・フィクションのJun潤のレビュー・感想・評価

パルプ・フィクション(1994年製作の映画)
5.0
2023.08.13

名作劇場再上映案件。
クエンティン・タランティーノのドキュメンタリーが公開されるということで、さて困った一作も見たことがない。
というところに今作再上映の知らせ。
これはぜひともドキュメンタリーを観る前に今作も観ようということで今回鑑賞です。
マジで作品名くらいしか聞いたことがないので、30年近く前の作品ですが新作のような気持ちです。

レストラン強盗を計画するカップル、ボスに対する裏切り者へ報復するギャングのコンビ、八百長試合を打診されるボクサー。
繋がっているようで繋がっていないオムニバス短編が、時系列を交え、群像劇、会話劇で繰り広げられていく。

なるほどなぁ〜!!
最近の作品に慣れ過ぎてしまっていたせいか、この描写はなんだろうとか、いつ回収されるのかなどにばかり注目してしまっていて、早急に結論を求めてしまう現代ならではの見方だけにいつの間にか固執してしまっていた。
それだけでなく、一つ一つの描写をちゃんと噛み締めて、はぁ面白い満足満足というところでさらに面白さが加速していくのを楽しむのも一つの見方。
そんな自分の映画鑑賞スタイルも原点回帰させてくれるような構成に感じました。

ストーリー自体は、今にしてみればよくみる叙述トリックの一つとも言える時系列シャッフルが肝の一つでしたが、これを30年前の時点で映画として完成させていたという事実に感服いたしました。
名作に歴史あり、ですね。
他にも今ではMCUでのおもしろ長官のイメージが張り付いているサミュエル・L・ジャクソンの若かりし姿や、吸血鬼なんじゃあないか?と思わせるほどに容姿の全く変化しないブルース・ウィリスと、公開から年月を経たからこそ楽しめる点もありましたね。

作品全体としてはまさにタイトル通りの『PULP FICTION』。
フィクションなのにどこか現実的で、リアリティがあるかといわれるとそうでもなく、あまりにも出来過ぎている。
そんな現実と空想の狭間に存在するような、あまり芸術的過ぎではない、かといって体力を使うほど迫力は抑えている、大衆向け雑誌の名を冠するに相応しい最高の娯楽作品。

最後に今作を観て、個人的な映画体験を元にした最近の興行について。
今でこそシネコンが各地にあって、広い館内にいくつものスクリーン、大勢の人が同時に観られるほど広い劇場もたくさんあります。
しかし僕が小さい頃に地元で映画を観るとなったら劇場は一つしかなく、注目作品が公開されるとなれば朝から大行列に並んでいた思い出もあります。
今でこそ娯楽の数も種類も増えたし、いわゆる口コミなどの情報も様々な手段で受け取ることもできるし発信することもできる。
それらの手段がまだ普及しきっていなかった頃は、映画という娯楽に対しては劇場に行くことが全てで、その中で完結していた。
だからこそ上述のような一つ一つの描写を噛み締める映画体験ができていたんだと思います。
他の人のレビューを見たり、日々更新されていくランキングや興行収入、著名人のコメントなどを見てから新作を観ることも、映画を観た後でネット上に転がっている評価や考察を読むまで、こんな風にレビューを書いて発信するまでが映画だとすることも、楽しみ方としてはどれも素晴らしいことです。
しかし今回のような往年の名作の劇場再上映に触れると、そんな映画本来の楽しみ方まで感じさせてくれるのだから、やはり映画というのはどこまでも奥深いですね。
Jun潤

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