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パルプ・フィクションのsingerのレビュー・感想・評価

パルプ・フィクション(1994年製作の映画)
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クエンティン・タランティーノは、若い頃の自分が1番リスペクトしてた監督だったと思うし、ロッキンオン社から出版されたライフストーリー「タランティーノ・バイ・タランティーノ」なんかも熱心に何度も読んでたくらいなんで、かなりの影響を受けてたんじゃないかと思います。

後、今までここでは語ってこなかったんですが、自分は10代後半から、20代前半まで、小さなビデオレンタルショップでアルバイトしていた事もあって、同じくビデオレンタル店の映画オタクの店員から、時代を象徴する映画監督までのし上がったというタランティーノには、とてもシンパシーを感じる部分が多かったんですよね。

「パルプ・フィクション」も、そんな時代に燦然と登場し、この胸にグサリと刺さりつつも、熱狂と興奮を与えてくれた、思い出タップリの作品でしたね。
やっぱり冒頭のシーンから、タイトルバック、そしてディック・デイルの「ミザルー」を背に流れる、オープニングクレジットからして、もう鳥肌が立ちまくりで、ワクワクさせられるし、なんだかもう、当時は最高にスタイリッシュでクールなものを体感しているという、ビリビリ伝わってくるような感覚が凄くありましたね。

でも、タランティーノの映画の描き方っていうのは、よくよく紐解いていくと、然程、新しい事ををやってるわけじゃなくて、なんだか音楽で言うヒップホップのようだったというか。
世界中のあらゆる映画作品に対する、マニアック過ぎる位の造詣の深さから導かれる、
様々な作品へのオマージュは、まるで古いレコードを刻むサンプリングのようでもあったし、
個性的なキャラクター達の語る台詞は、ラッパーたちが書くリリックのようであり、その台詞回しはフロウのようでもあり。
後、やっぱり音楽の選曲のセンスも感心させられるばかりで、本作のサントラもかなりヒットしたし、自分も随分と聴き込みましたね。
そんなこんなを総じて、タランティーノのアプローチは、キャスティング、サウンド、ビジュアルをはじめとする映画作品の構成要素を、彼独自のフィルターを通してミックスしてビルドアップしていくような、そんな手法がとにかく斬新で、当時は革新的だったなぁと。

実際、タランティーノだけは、ポストに当たるような存在が見当たらないし、今になってもタランティーノじゃないと撮れない作品を作っているという、唯一無二の存在だなぁと思います。

そんなタランティーノの映像世界の魅力を1番感じられるのが、この「パルプ・フィクション」だと思うし、時系列を巧みに組み替えつつ、幾つものストーリー綴っていくシナリオに、魅力的なキャラクターを縦横無尽に行き交わせるという、そんなタランティーノのタッチが、最もエキサイティングで、スタイリッシュに表れた作品ですね。

そんな個人的な思い入れや、時代とのマッチング感も含めて、やっぱ今作がタランティーノのベストなんじゃないかと、今でもやっぱりそう思います。
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