元空手部

生きるべきか死ぬべきかの元空手部のレビュー・感想・評価

生きるべきか死ぬべきか(1942年製作の映画)
4.2
ナチスドイツ占領下のポーランドでのレジスタンス運動をハリウッドがコメディとして映画化するという、よくよく考えてみればかなり捻くれた作品。当然に使用される言語は英語だし、スクリューボールコメディの御多分に洩れず過度なパロディとデフォルメで成立してる作品だ。そして、スクリューボールコメディの常として全編が等閑的というか、特定の部分に重みがない。
そんな本作であっても免れないなにかは2つあった。そちらについてレビューしたい。
まず、ハイルヒトラーでの挨拶だ。本作ではこの挨拶がかなり多用されている。チャップリンはインチキドイツ語でヒトラーを茶化したが、本作はあくまで言語のままで風刺を行う。ハイルヒトラーの多用によりナチズムを陳腐化させる意図にあるのだろうが、同時に翻訳不可能な言語だという痕跡を残す。何かに擬態することを風刺であるとするならば、脱構築を通じた不可能性にまで位置している。
そして2つ目には女優と教授のキスだ。
本作で唯一のキスシーンは敵対関係の2人によるものだ。これは脚本の操作によりいくらでも描写を回避することはできたし、構成としては自然なはずだ。先ほどは重みがないと記述したが、様式の観点から見るとこれは明らかに重みのある逸脱だ。ところで裏切りの接吻といえばユダのイェスに対するそれが思い浮かぶが、考えすぎであろう。
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