stanleyk2001

草原の野獣のstanleyk2001のレビュー・感想・評価

草原の野獣(1958年製作の映画)
3.8
『草原の野獣』
Gunman's Walk (ガンマンの道)1958

「お前は『ガンマンの道』を歩きたいのか?その道を歩けば遅かれ早かれお前は死ぬぞ」

「リー、これは昔あんたが撃った三人から取り出した弾丸だ。法的にも道義的にも彼らを撃つ必要はなかった」
「あの時代に法があったか?」

なかなか見応えのある立派な西部劇だった。力が法律だった西部開拓時代の終わりの始まりを描く家族の悲劇。

『シェーン』の農場主を演じたヴァン・ヘフリンが数百頭の馬を持つ大農場主リー・ハケットを演じる。アイルランド系のヘフリンが演じるのは叩き上げの自営業者。自信に満ちたマッチョな父親。母親は早くに亡くなったのか登場しない。

リーには2人の息子がいる。長男エド(タブ・ハンター)は冷酷な感じの金髪碧眼のハンサム。ネイティブ・アメリカンへの差別心を隠さない。女性蔑視もする男。銃の腕前は父親にも負けない。

次男デビー(『タイムトンネル』のジェームズ・ダレン)は長男とは対照的な大人しい紳士的な青年。銃の腕前はかなり下手だ。

リーやエドが身につけているのは西部劇の定番コルト・シングルアクション・アーミーではなくダブルアクションリボルバーだ。そして街に入る時は銃の携帯は禁止されている。

西部開拓時代が終わり銃ではなく法律が支配する時代が始まっている。

しかし父親リーと長男エドの頭の中は西部開拓時代のまま。銃が正義だ。手向かうやつは黙らせる。インディアンは人間じゃねえ。

リーと息子たちは数百頭の馬を他の街まで運ぼうと旅に出る。人手が足りないのでネイティブ・アメリカンの牧童を3人雇う。

3人のうち1人の名はポウル。ポウルの妹はフランス人とネイティブ・アメリカンの間に生まれた美しい娘クリー(キャサリン・グラント)。エドが差別的にからかい、弟デビーは兄の振る舞いを詫びる。そして密かにクリーとデビーは愛を育む。

旅だったハケット親子。一頭の馬が群れから離れて走り始める。ポウルが馬を追う。そこにエドが割り込みポウルを突き飛ばしポウルは崖下に落下して死ぬ。

裁判が始まり一部始終を目撃していたネイティブ・アメリカンの牧童達の証言でエドの有罪が決まりかけた時以外な目撃者が現れる。

嘘が嘘を、不正が不正を呼び込みパケット親子はのっぴきならない深みに陥っていく。そして野獣と化したエドに対して父リーが下した決断は、、、

『エデンの東』とかギリシア悲劇の様な結末に言葉もない。

追記
画面は常に光と影がある。屋外場面も影が長く伸びていることから朝や夕方の太陽の高度が低い時間帯に撮影されたと思われる。撮影監督チャールズ・ロートンJr.は「善と悪の対立」というテーマを際立たせるために必ず人物達に深い影ができる様に工夫したのかもしれない。
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