『宿無し犬』
(1964昭和39年)
大映京都
「にいちゃん、この女のヒモか?」
「ヒモみたいな細いもんちゃうわい。ロープじゃ」
「ヤクザにはな吹いて飛ぶような奴と飛ばん奴がおる。俺は吹いても飛ばん奴や」
『悪名』シリーズで勝新太郎との名コンビで注目された田宮二郎の単独主演『犬』シリーズの第一作目。
脚本は当時大映社員だった藤本義一のオリジナル。主人公のキャラクターは『悪名』のモートルの貞(清次)とほぼ同じ。口が達者で喧嘩っぱやくて女性に惚れっぽい。いつもおしゃれな服を着ている明るい雰囲気。
不動産業を表の顔にしているヤクザの世界に入って彼らの企む悪事と謎めいた美女に翻弄される。
ファムファタールを演じる江波杏子さんの美しさ。水島道太郎の貫禄。成田三樹夫もまだ三下だ。坂本スミ子さんが逞しくてコケティッシュ。
水島道太郎が使うのはスミス&ウェッソンM36チーフススペシャル。田宮二郎が使うのは多分大映オリジナルのオートマチック。変な形の銃だけど弾丸を打ち尽くすとホールドオープンしていたのは立派。
天知茂さんが無精髭とヨレヨレコートの刑事。ヤクザの田宮二郎との間の距離感が面白い。
ヤクザの世界だけど東映とは違って義理や人情は無くてヤクザは不法なビジネスで儲ける悪人と言う描き方が多分現実に近いのだろうと思った。