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二人で歩いた幾春秋のakrutmのレビュー・感想・評価

二人で歩いた幾春秋(1962年製作の映画)
3.9
河野道工の歌集『道路工夫の歌』にインスパイアされた木下惠介監督が、『喜びも悲しみも幾歳月』で夫婦役を好演した高峰秀子と佐田啓二を再び起用して、道路工夫の夫と妻の半生を描いたドラマ映画。本作も『喜びも悲しみも幾歳月』も、ある職業を持つ夫婦の苦労や苦悩を描いている点では同じだが、その内容は対照的である。『喜びも悲しみも幾歳月』の灯台守という職に対して夫婦ともに誇りを持っていて、将来にとても前向きである。一方の本作は、上司にこき使われる末端労働者であり、生活のために仕方なくやっているという後ろ向きの感じである。各地を転々とする灯台守に対して、本作では夫婦はずっと山梨に暮らすという設定である。

そんな中でもたくましく生きる夫婦を演じている高峰秀子と佐田啓二がやはり素晴らしい。特に、夫をおおらかに包み込む高峰秀子の女房像が素敵だし、映画の処々に河野道工の短歌が挿入される演出も印象的。夫の初恋のエピソードなど、ユーモアあふれる場面も随所に見られ、夫婦の仲の良さがうまく表現されてもいる。息子の相手役として出演している倍賞千恵子は、デビューして間もない頃であり、とても初々しい。
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