まりぃくりすてぃ

モロッコのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

モロッコ(1930年製作の映画)
2.0
男女の、どうでもいいお話。となると、あとはキャストの魅力頼み。

ゲーリー・クーパー、たしかに美男だけど、「イケメンね。で、彼は何ができる人?」という不足感が本作では終始つきまとう。つまり、「美男で、サッカーがうまい」とか「美男で、ボクシングのチャンプ候補」とか「美男で、シゴトばりばり」とか、♂としてのハイな価値が映画の中でまったく描かれてなく、設定・展開ともにただの「女好きの一兵卒」でしかないから、この男優に何かサービスされてる気持ちに私は全然ならなかった。せめて特技を一つ披露するとか、言動が目をみはらせるとか、摩訶不思議な癖をもつとか、シナリオに工夫が欲しい。

マレーネ・ディートリッヒ、あまり好きくない。グレタ・ガルボの下位互換? 中小企業のパートのおばさんが宴のために盛装して現れただけ、みたいな鮮度悪げな美貌の女優がみずからの厭味な存在感を「やさぐれ寄りのドサ回り歌手」役に単に無造作に当て嵌めていったのか。それとも、歌える女優がキレある秀逸な演技によって「純愛を好むがワケありでやさぐれててマイペースにしか生きられない、しかし新時代の新女性像を打ち立てていけそうでもある、薄幸なドサ回り歌手」になりきったのか。どっちとも決めつけられないけど、大げさで俊敏サコサコな動きがサイレント臭くて(とてもうまいけど)性格も悪そう。

セザール夫妻役は味があった。その美男ウルリヒ・ハウプトと愛され系美女イヴ・サザーンを主演させ、クーパー&ディートリッヒを脇役(セザール夫妻)にしてたら、歴史はどう変わったかしら?

[三鷹市芸術文化センター 星のホール “世界の名優 ゲイリー・クーパー”]