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インファナル・アフェアのエディのレビュー・感想・評価

インファナル・アフェア(2002年製作の映画)
4.3
マフィア組織から刑事に送り込まれた男と、警察からマフィア組織に囮捜査官として送り込まれた男の戦いと悲しい結末を描いた香港のハードボイルド映画。有名なハリウッド映画「ディパーテッド」はこの作品のリメイクだが、ディパーテッドは展開をスピーディーにし過ぎているので余韻があまり残らない。個人的にはこの作品のほうがはるかに好きだ。

マフィアの組員ラウはボスの指示で身分を隠し警察学校に入校し香港警察で10年余り過ごし、内部調査課の課長まで昇進、人気作家との結婚も間近なのでまさにばら色の人生だ。
一方、警察学校で優れた成績を残していたヤンは、ウォン警視など極小数のみが知るプロジェクトでマフィア組織への潜伏を指示される。エリートだったヤンだが、チンピラから長い時間をかけマフィア組織の片腕にまで昇進する頃には身も心もボロボロになり、精神科に通う日々が続いていた。ヤンにとっての楽しみは美しい精神科医リーと過ごす時間だけだった。

そんなある日、ヤンは大掛かりな麻薬取引情報を入手しウォン警視に伝えるが、組織の摘発直前で内偵捜査がばれてしまったことから、警察に内通者がいるとヤンは考えた。一方、秘密裏の取引が警察に筒抜けになっていたことで、マフィアボスも組織に裏切り者が居ると確信し、双方の組織でスパイ探しが始まる中で二人の立場は危うくなっていく。。。

「ディパーテッド」と比べると、今作は話の進み方がかなりゆっくりに思える。しかし、その分、ラウとヤンの立場の違いや心境を非常に丁寧に描いているので、単なるアクション映画以上に胸を打つ作品に仕上がっている。

特に、使命感を持って警察に入り優秀な成績を収めていたのにチンピラになって底辺の人生を味わうヤンの気持ちが痛いほど理解できる。ウォン警視との投げやりだが信頼関係あってこその会話や、孤独に過ごしているサマはとても悲しい。

一方で、ラウは人生を謳歌している上に、裏社会に通じているので良いとこ取りに思えるが、彼なりに苦悩している姿が丁寧に描かれているのでラストに涙する。

二人の男の間逆の人生は、双方のスパイ探しでクロスする。それだけでも運命的なモノを感じるのに、クロスした後、また別々の道を歩んでいくのでないところがとても感動的だ。

ゆったりと流れる大河のような情感に溢れた素晴らしいハードボイルド映画だ。
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