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さようならCPのTSのレビュー・感想・評価

さようならCP(1972年製作の映画)
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【障がい者の社会への眼差し】
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監督:原一男
製作国:日本
ジャンル:ドキュメンタリー
収録時間:82分
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これはスコアをつけてはいけない気がしました。いつもスコアをつけないのはワケありなのですが、これは特にそうでして決して評価が低いからなしにしているわけではありません。むしろ良かったというか衝撃的な作品でした。監督は『ゆきゆきて、神軍』でも有名な原一男監督。この監督は、普通ならば撮ってはいけないものをありのままに撮るところが頗る凄い。ゆきゆきてでは奥崎謙三と監督のせめぎ合いが凄まじかったですが、本作ではそれが障がい者とのものになっています。

まず、他の方も言及されていますが今作は字幕推奨です。しかし、その字幕ONにすることでさえも一種の抵抗がありました。やはり、障がい者の生の声はそのまま受け取るべきものではないのかと。しかしながら、字幕なしとなると聞き取りは容易ではありません。僕は字幕ありで見たのですが、時折目をつぶって聞いてみてもやはりわからなかったです。なので、綺麗事とはいえしっかりと障がい者の声をキャッチしたいのならば字幕ありが良いでしょう。

CPとはCerebral Palsy の略で、いわゆる脳性麻痺のことです。40年程前の映画でして、当時の時代感が出ています。彼らにとっては、横断歩道を渡るだけでも命取りなのです。カンパをするシーンが作中かなり映されますがこれも何とも言えない気持ちになります。それを無視する人は言わずもがななのですが、カンパをしてくれる人に対しても悶々とした気持ちを抱きます。カンパの箱にお金を入れるのはなんと「子ども」なのです。つまり、親が彼らに同情をして子どもにお金を渡しているということなのです。子どもからすると「なんとなく」といったところですが、これは親がしっかりと説明をしないと危険です。何故なら、子どもがそういう人にカンパをするということが、子どもにとっては一種の遊びになってしまうからです。同情するなら金をくれ。とはよく言ったものですがその言葉を少し考えさせられました。同情した彼らはお金をカンパするだけで通り過ぎてしまう。これは本当の同情というのでしょうか。

社会における異なる存在の排除という傲慢な態度には一定の言及が出来るでしょう。資本主義社会が確立している今、「普通に」働けない人は排除されてしまいます。しかし、それではあまりにも不躾だということで障がい者の福祉施設を普及させていると思わずにはいられません。結局のところ、法の下の平等なんて綺麗事でして、まだまだそれが実現できていない。社会の厳しさ、冷たさを実感させられた作品でありました。確かに今作が撮られた40年前と比べたら、現在は福祉環境が整ってきているともいえます。バリアフリーを目標にするこの福祉社会といえる日本の社会は、着々と良い方向に向かっていってるでしょう。しかし、いくら施設環境を良くしたとしても、我々との接触がなければ真の平等は実現出来ない気もします。
そう考えると、障がい者の方と全く触れ合ってこなかった自分の人生を反省しました。世の中には歩くことさえ困難な人がいる。真摯に向き合わないといけないと痛感されました。

スコアをつけるとするならば、4.0程でしょうがつけてはいけない気もしましたので今回は良い意味でスコアなしとさせていただきます。
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