特濃ミルク

クラムの特濃ミルクのネタバレレビュー・内容・結末

クラム(1994年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

 「何で絵を描くか?描いてないと自殺したくなるからさ。まあ描いてても自殺したくなるんだけどね。」
全然知らなかった漫画家、ロバート・クラムのドキュメンタリー。
 しつこくハッチングを重ねる「ガロ」的な描線や、エログロナンセンスを容赦なく描く作風、少年時代の強烈な劣等感から来る商業主義やメインカルチャーへの軽蔑…。なんかすごく親近感が沸くな(まあ同じくらい同族嫌悪も感じたけど…。)。
 途中で女性の編集者?から指摘されるが、クラムが政治、女、有色人種、あらゆる方面に牙を剥いて生きるのは結局「俺は絶対に世界から拒絶される」という恐怖の裏返しなんだよな。アウトサイダーとしてしか生きることが出来ない悲しさがそこにはある。
 兄弟たちも皆そうだったんだろう。時代の影響もあって簡単にドラッグとかスピリチュアルな方向に惑溺しちゃっただろうし、それで兄貴も弟も何か雰囲気が危ういなぁ…と思ってたらあのラストね…。
 …彼自身もインタビューで似たような事を語っていたが、結局のところ強力すぎる自己愛のせいで社会と折り合いを付けられず、身を滅ぼしてしまったんだな。その気持ちは痛いほど分かる。
 兄貴にももう少し表現の才能があればな…。まあそういう意味ではロバートクラムも本当に紙一重だったと思うが。…とにかく才能のないアウトサイダーはマジでつれぇという事だな。
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