こたつむり

笑の大学のこたつむりのレビュー・感想・評価

笑の大学(2004年製作の映画)
3.1
♪ 東京中の電気を消して夜空を見上げてえな
  かわいがってる ぶざまな魂
  さらしてみてえんだ

時は大正十五年。
次第に暗くなる世相を反映するかのように、演劇の脚本に検閲が入り、今日も「不許可」の印が押される…。検閲する側とされる側を描いた物語。

原作は三谷幸喜さんの舞台劇ですね。
密室劇として脚本のクオリティが高いのも納得です。

メインの登場人物は二人。
限定された空間で描かれる物語ですからね。彼らの魅力(+存在感)が重要です。本作では役所広司さんと稲垣吾郎さんが起用されていましたが、印象としては無難でした。

ただ、人物造形は見事な限り。
特に役所広司さんが演じた役柄は“リアリティ”がありました。まさしく“慇懃無礼”を地で行く役人なのですが、自分が“正義”だと疑っていないから厄介なのです。特徴的な部分をデフォルメして俎上に載せる…三谷幸喜さんの真骨頂でした。

だから、諸手を挙げて「あゝ面白ひ、面白ひ」
と言いたいところなのですが…正直なところ、テンポが悪く。映画化ということで追加した要素が重たく感じた次第。

これは、喩えるならばゲームの進化。
ファミコンでは面白かったのに、スーパーファミコンになったら“もっさり”と変化してしまった…そんな印象に近いのです。表現力は確かに向上しているんですけどね。面白さの本質は“そこ”にはないのです。

監督さんは丁寧に仕上げただけ。
…なのでしょうが、コメディで120分って…やっぱり長いですよね。

調べてみたら、三谷幸喜さんが監督を務めた作品も『ラヂオの時間』は短かいのですが、それ以降は段々と長くなっていました(『ギャラクシー街道』は除く)。もしかしたら、三谷監督の評価が年々下がっているのも…それが原因の一つかも。

まあ、そんなわけで。
コメディで重要なのは“テンポと間”だと再認識した作品。設定は面白いですし、出演者の魅力はムギュッと詰まっていますので“笑い”に期待しないで鑑賞したほうが良いと思います(タイトルに反しますが)。
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