矢嶋

仮面/ペルソナの矢嶋のネタバレレビュー・内容・結末

仮面/ペルソナ(1967年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

いきなりカットアップのような手法を用いた強烈な場面から始まる。
その後、失語症になった女優と看護師が療養するというストーリーが展開する。

難解で色々考察の余地がある作品だが、最初はそれなりに分かりやすい説明がある。すなわち、演じるということ、仮面を纏うことに疲れたエリザベートはそれを捨てたという非難である。とっかかりとして必要な視点だと思う。

共に過ごすうちに心を許し、赤裸々な過去を打ち明けるアルマだが、それを暴露されたことで激怒する。その怒りと共に、顔が破かれ穴が開くというカットが挿入される。
その後、対照的に見えた二人が混ざり合い、境界が曖昧になっていく。エリザベートの夫はアルマを妻だと思い唇を重ねる。そして、二人の顔が半分ずつ重なるようなモンタージュが映ると、やがてアルマは自分が暴露された過去と対になるかのようなエリザベートの過去を話し始める…

多面的で社会的な存在である人間にとって、人格には仮面という性質が包含される。劇中では母親、妻、女優といった要素がそれにあたるだろう。女優という職業がそこに含まれることは必然である。それは、演じることの正当性を確保できる領域だからだ。非仮面的な人格はあり得るのか?その回答は、劇中で繰り返された「無」ではないだろうか。
このように、様々な洞察を含む興味深い作品だ。

撮影手法も前述のような飛び道具的なものは勿論、異様に長い1カットでで何も語らずただこちらを眺めるエリザベートを映すといった印象的なものが多い。画面の手前に無表情のエリザベートを配置し、その背後で物事が進行する手法はその最たる例である。

とっつきやすさは皆無で見るのに集中力が求められるが、影響を語る映画監督が多いのも頷ける作品だ。
矢嶋

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