亘

ニュー・シネマ・パラダイスの亘のレビュー・感想・評価

5.0
【甦る郷愁、溢れる映画愛、時を経る愛情】
イタリア・ローマ。映画監督サルヴァトーレ・ディ・ヴィータの元に訃報が届く。それを機に彼はシチリアで暮した少年時代を振り返り30年ぶりに帰郷する。

映画愛にあふれた名作。個人的には大好きな映画でこれに勝る映画はないと思ってる。トトことサルバトーレの少年期、青年期、中年期(現在)の3つの時期から構成されていて、トトの様子は時と共に変わる。それでもトトの映画愛やアルフレードの愛情は不変なのだ。そして今作の特徴は、シチリアの田舎町ジャンカルドの人々の様子を描いていること。映画はかつて町の全ての人々の娯楽であり、映画館シネマ・パラダイスはこの町の人々の生から恋愛、死まであらゆる生活を見守ってきたのだ。

[幼少期:映画愛]
トトは映画好きでわんぱくな男の子。映写技師アルフレードのいる映写室を頻繁に訪れ次第に映写機の使い方を覚えてしまう。ある日自宅で貯めてたフィルムを燃やしてしまったことから母親に映画禁止令を出されるが、機転を利かせて映写室の手伝いをするようになる。この時期のトトはとにかく無邪気。笑顔はかわいいし、いたずらは微笑ましい。このころからアルフレードのことは大好きで、二人で自転車乗るシーンは印象的。
幼少期最大の事件はシネマ・パラダイスの火災。観客が逃げる中でも勇敢にアルフレードを助け出すトトの行動には2人の強い絆を感じた。この火災の後トトはアルフレードに代わり映写技師として働き始める。

[青年期:初恋]
トトは転校生としてやってきたエレナに一目ぼれし、彼女にアタックしようとする。ここで彼が相談したのがアルフレード。アルフレードは「青い目は手ごわい」「体が重いほど足跡も深い」などトトにアドバイスし『王女と兵士の話』をする。結局兵士が99日目に去った理由は明かされないんだけど印象的な話。トトも兵士のようにエレナを待ち続けたけど、なかなかエレナは現れない。諦めようとしたとき見事エレナと付き合う事になる。
青年期最大の事件は、エレナと離れ離れになってしまう事だろう。エレナとの幸せな日々は長く続かなくて、エレナは都市へ引っ越してしまうしトトは徴兵されてしまう。しかも徴兵の日エレナが現れるかと思いきや彼女は現れない。徴兵後帰って来ると町は変わってしまってる。
そして傷心のトトにアルフレードはローマへ行くよう諭す。アルフレードの言葉は厳しく聞こえるけど、それはトトを思うからこそであって一つ一つの言葉が愛情のこもった名言。愛するからこそ郷愁に負けそうなトトを突き放しローマへ送り出すのだ。

[中年期:郷愁]
アルフレードの訃報を機にトトは30年ぶりに故郷シチリアへ帰る。トトがずっと帰らなかったのはアルフレードの言葉を守ったから。町を離れているうちにトトはいつしか名監督となっていた。町には車が普及しテレビ・ビデオ人気に押されて映画館は閉館になった。町は変わり果てたし、人々は年を取った。それでもみんなトトのことを覚えていて、実家やシネマ・パラダイスに行けばかつての映画愛を思い出しトト自身「ずっとこの町にいたようだ」と話す。これこそアルフレードが話していた「変わらない故郷」だろう。そしてまた母親の愛情も感じられた。母はトトのことを想って30年間何も尋ねなかったし、いつかトトが帰る日を待ってトトの部屋を整えていたのだ。アルフレードも母親も、愛しているからこそトトに何も言わず遠くから彼を想っていたのだ。

そして今作のクライマックスは何といってもラスト。ローマに帰りアルフレードの遺したフィルムを再生すると、それは幼少期のトトが遊んでいたフィルムだったのだ。このフィルムはトトのためにアルフレードが編集した愛情の証であると同時に、トトにとってはかつての純粋な映画愛そのものであり自分の原点。ただでさえ思い出のフィルムは感動できるのに、それを美しい音楽にのせるのは卑怯。[世界一泣けるキスシーン]だと思う。

印象に残ったシーン:トトが映画を見て笑うシーン。トトとアルフレードが自転車に乗るシーン。海辺でアルフレードとトトが話すシーン。実家でトトと母親が話すシーン。思い出のフィルムを見るラストシーン。

印象に残ったセリフ:「人にはそれぞれ従うべき星がある」「人生は映画とは違う。人生はもっと厳しいものだ」「お前とは話したくない。お前の噂を聞きたい」「自分のすることを愛せ。子供のころ映写室を愛したように」

余談
・舞台の町ジャンカルドは架空の街です。撮影は、シチリア島にあるジョゼッペ・トルナトーレ監督の故郷バゲーリアで撮影しました。あの広場はパラッツォ・アドリアーノというパレルモの広場だそうです。

・今作にはトルナトーレ監督がカメオ出演しています。最後アルフレードのフィルムを見るシーンで、映写室でフィルムをセットし上映している眼鏡の男性です。