【1977年キネマ旬報日本映画ベストテン 第2位】
新藤兼人が津軽三味線を全国区にした第一人者、高橋竹山の半生を実際の映像と組み合わせながら描いた作品。
奇しくも同じく盲目の瞽女を描いた篠田正浩『はなれ瞽女おりん』がこの年の3位に入っている。
冒頭とラストに出てくる実に堂々とした風格のある高橋竹山本人とは似ても似つかない、風来坊のような若い頃を演じた林隆三は素晴らしい。
また母を演じた乙羽信子、息子のためならどこまでも追いかけ庇い耐え忍び、そしてラストはこの映画のハイライトと言ってもいい名演をみせる。流石は往年の大女優。
新藤兼人はいくらでも悲劇的に演出できるものをあえて突き放しドライに描いている。かと言って竹山の人となりをおざなりにしているわけでもなく、愛嬌も描き出している。
『裸の島』に続きやはりそこまで好きな作風ではないが、これは評価しないのは難しい。