zhenli13

あらくれのzhenli13のレビュー・感想・評価

あらくれ(1957年製作の映画)
4.4
始まって1分で「このデコちゃん好きだ!」と確信。高峰秀子演ずるお島が何かというとすぐにドタンバタンガチンコファイトを始める。成瀬映画における三大ダメ男(か?)上原謙・森雅之・加東大介勢揃い。森雅之以外とはガチンコファイトを繰り広げる。そのたびに笑ってしまう。これまで成瀬映画で虐げられてきた女たちの復讐をしてくれているようにも思える。
森雅之とはズルズル縁を切れず(浮雲か)、デコちゃんは妾にはなりたくないと言いつつ離れてなお逢瀬を重ね結局最後まで愛していたようだけど、とどのつまりは他の女に自分のものをとられる焦りや怒りの方が強いようにもみえる。

幼少から養女に出され帰るところも無く、女性が生きられるすべは男性に従属することしか無い時代(この時代の何と長かったことか。そしてまだ続いてる)に技術を身につけ、商売を興し、ダメになればまた再起をはかるバイタリティに快哉を叫びたくなるが、彼女はその折々に必ず、社会的な窓口としての男を必要としている。そのつど仕事ができそうな意欲のある男を選んでいる。これが男同士なら相棒なり良きライバルなりになるだろうし、彼女もそう生きられるほうがうんと活き活きできたのだ。しかし男女ゆえにセクシャルな関係に帰結し、男は商売の同志である女を従属させる対象にしてしまう。加東大介も結局そこにズルズルもたれかかってしまい、仲代達矢(若い!)と丁稚の少年へ次のカードが切られる。
その先にまた同じようなことが待っていそうなのは容易に想像できる。ズルズル絡めとられたり蹴飛ばし返したりしながら。
zhenli13

zhenli13