ボブおじさん

街のあかりのボブおじさんのレビュー・感想・評価

街のあかり(2006年製作の映画)
3.7
フィンランドの異才アキ・カウリスマキによる〝敗者3部作〟の最終章。 「浮き雲」でリストラされた夫婦、「過去のない男」では、暴漢に襲われ記憶を失った男を描いのに続き、今度の主人公もなかなかに悲惨な目に遭う。

ヘルシンキの街で孤独に過ごす夜警員のコイスティネンは、美しい女ミルヤと出会う。一瞬にして彼女に恋してしまった彼だったが、実はミルヤはマフィアの情婦だった。マフィアに踊らされたコイスティネンは、宝石強奪の罪をなすり付けられるのだ。

主人公は、前2作と同様に無愛想で笑わない無口な中年で、職場でも同僚と距離を置き、恋人も友達もいない。

感動的な演出を排除し、淡々と話が進むのはいつものことだが、この作品もドラマチックなシーンというものが少ない。

絶望に打ちひしがれる中、孤独に慣らされた男が、その純粋な心を受け入れてくれる人の元にようやくたどり着く。身も心も肌寒いヘルシンキの街に、微かなあかりが灯される。