わたがし

ナイト・オン・ザ・プラネットのわたがしのレビュー・感想・評価

5.0
 映画館で初鑑賞。スクリーンの奥の世界とこちら側の世界は確実に同じ時が流れていることをしみじみと感じさせてくれる。日常がガラッと変わって成長を強いられるのも映画(人生)だけど、変わらない日常の中で成長しないのもまた映画(人生)なんだと心穏やかになる。映画、当たり前だけど観れば観るほどいろんなものがあって素晴らしいですね
 明確なドラマチックな作劇のある映画、に対する真逆が当然のように存在して、ちゃんとリバイバルに客がたくさん入って、という状況に芸術の美しさを感じる。正解がないって素晴らしいなと思った。だからこそ正解の美しさもある。つまり世界の大体のものは美しい!
 ジャームッシュ映画って持ち上げられ方としてダウナーでシリアスな印象があったけど『コーヒー&シガレッツ』とこれを観た限り、かわいらしい悪意(とまではいかない悪戯心みたいなもの)が匂い立っていて、全然クリープハイプのあの曲のあのダルい感じじゃないやん、と思う。全然ポップだし、だからこそ心の受け皿が広いんだろうな
 海外市場のことはよくわからないけど、どうしてこういう映画がちゃんとビジネスとして成立しているんだろう、もっと直球に言うとどうしてジャームッシュは何本も映画を撮れているんだろうというのがずっと気になる。金回りのこととかどうか教えてほしい
 全編ずっと映画的な作為性を拒むような作りになっているのに、ロサンゼルス編だけ完璧なタイミングで飛行機が横切ったり、ウィノナ・ライダーの異常に映画映えする(のにキャラは映画キャラであることを拒絶するような人生観)感じとかが異質に感じた。これをアメリカの話、それも初っ端に持ってくるあたりもちょっと悪戯を感じるな
 どのシーンも車内で喋っているだけとはいえ、ずっとナイトシーンだし皆煙草吸ってるし延々移動する車だしで大変だっただろうなと思った。その大変さを微塵も感じさせないこのおしゃれすぎる凡庸さ。映画館で観れて良かった。
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