わたがし

ケープ・フィアーのわたがしのレビュー・感想・評価

ケープ・フィアー(1991年製作の映画)
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 昨日の『カジノ』に続いてこちらも死ぬほど面白かった。めちゃめちゃジャンル映画なのにちゃんとキャラクターがみんな善悪グレーでソワソワするし、刺青だらけで髪質ベタベタオールバックのデニーロは画面に映り込むだけで面白い。ヒッチコックほぼ観てない自分にもヒッチコック目指し映画なのはわかるけど、ゼメキスの『ホワット・ライズ・ビニース』の何倍も上手くいってると思った。ゼメキス先生、ごめんなさい。
 主人公の弁護士の仕事に誇りを持つと共に、弁護士という仕事への懐疑みたいなところから生み出されてしまったモンスターのデニーロが、漫画スレスレの迫力でガン詰めし続けるだけの2時間なんだけど、サスペンスの精度が高くてずっとワクワクしながら、時々テーマを考えて後ろ暗くなりながら観れる、本当に楽しい映画。
 たった一言の捨て台詞だけでカメラをギュイーンって捻る煽り、かと思えばデニーロの少女を洗脳するくだりは超オーソドックス切り返しのみで10分ぐらいどっしり映したり、そういう緩急が本当に巧みで本当に「映画に踊らされている」ような感覚になる。
 エンターテインメントというのはやはり自分がただ踊っているのを見せるだけでは成立せず、いかに観客を躍らせるかなんだなみたいなことをあらためて考えた。倫理破綻者を愛らしく、心優しい人をアホらしく、みたいな詐称とハッタリでどれだけ人間を暴けるかということ。現実世界でただ人を愛したり憎んだりするだけでは知り得ない真実がやはり映画にはある。
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