わたがし

カジノのわたがしのレビュー・感想・評価

カジノ(1995年製作の映画)
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 ずっと感嘆のため息をつきながら観てた。3時間ずっと面白くて3時間ずっとゴージャスな演技が観れる最高の映画。
 デニーロ演じる主人公が『グッドフェローズ』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』みたいな露骨に倫理破綻者じゃないので堕ち方も人生の決着の付け方も堅気っぽくて、でもそれが「あの豪華絢爛なラスベガスを支配できるところまで行ったヤバ人間なのに」っていうところの可笑しみを助長させていて、上記2作と同じことやってるようで全く違う映画と思う。真っ黒な人間じゃなくてグレーな人間が、グレーな人間なりに堕ちる。その対比としてジョー・ペシがいる。
 カメラも編集もキレキレで相変わらず観てて酔っ払いそうになるし、オーソドックスな切り返しの画なんかも照明の明暗のディティールで上下関係や感情の揺れが行ったり来たり。ここまで照明が作り込まれているからこそ俳優がわずかに首を横に振っただけですごく動揺して見えるんだ、みたいなことをずっとやってて本当に画でストーリーや情感を語ることの美しさ、豊かさが身体に染み渡る。
 映画がデジタル化する前のフィルム撮影だからこその凄みのある、暴力ショットのマイケル・ベイ並みのカメラぶん回しとか、神経質なDJ編集とか、そういう技巧的な感動が『グッドフェローズ』より強く、作家としてというより監督としてのこの時期のスコセッシの集大成感がある。
『グッドフェローズ』の話がないように見えて実はしっかり筋があって、クライマックスで異常な盛り上がり方をして主人公と一緒に観客が地の底まで堕ちる、ああいう高揚感はないけど、こっちはこっちなりのしんどい人生があるんだという。シャロン・ストーンがここぞというタイミングでめちゃくちゃ氷の微笑スマイルしてたのが面白かった。
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