TakuMori

息もできないのTakuMoriのレビュー・感想・評価

息もできない(2008年製作の映画)
4.9
「2人でいるときだけ、泣けた。」
このコピーがとにかく刺さった。
とんでもない映画を観てしまった。
とんでもなく、やるせなかった。

妹と母を死なせた父を憎みながらも、暴力しか感情を表現できる術を知らないチンピラのサンフン。
母を失い認知症(?)の父と不良の弟の世話で苦しむ女子高生・ヨニ。
似た者同士の2人が、最悪な出会いをしてから徐々に心を交わすようになる。


ほとんどずっと暴力と暴言ばかりの映画で、真っ当な幸福を得られず苦しみながら生活する登場人物たちが本当につらい。
2人の膝枕のシーン、甥が懇願するシーン、3人で買い物するシーン、父を運ぶシーン、最後の病院のシーン…
印象的な場面が多くて、その画を思い浮かべるだけで切なくなってしまう。
そしてヨニが一瞬サンフンを重ねるという、なんとも言えないあのラストシーン。
見方は色々あると思うけど、暴力の連鎖をテーマに描きながらも、最後に暴力や立場を超えた繋がりの可能性を示したのだと個人的には感じた。
家族の形に焦点を当てながら、人と人との関わりに救いを求めた、監督のメッセージなんじゃないかなと。


終わった後に調べてみると、この映画は主演のヤン・イクチュンが自分の全てをぶつけて撮った初監督作品で、超低予算でほぼ手作りのようなインディーズ映画らしい。
この作品を撮りたくて監督をやっただけなので、これ以降かなりのオファーがあったが全て断ったとのこと。
なんというか、すごすぎる。
奇跡みたいな魂の映画でした。
観てよかった。



以外、覚え書き
・ピンクのカーディガン
・「シバルラマ〜」
・プレステ
・ポケモンのアニメ
・借金の取り立て
・ビンタ
・学芸会に行かなくちゃ
・ビール
・ポケベルから携帯へ
・河原
・カメラが揺れる
・焼肉屋
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