TakuMori

リリーのすべてのTakuMoriのネタバレレビュー・内容・結末

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

遊びでしてみた女装に本格的にハマって心も女になっていく的な話かと思って見始めたら、全然違う話だった。
女装をきっかけに女の人格「リリー」が生まれて二重人格(精神分裂)になったのかと思いきや、実は元々トランスジェンダーで…世界で初めて性転換手術を受けて亡くなってしまうまでのストーリー。実在の人物を基にした映画らしい。

主人公夫婦が画家で、出てくる風景に街並みに人々のファッションに全てがおしゃれでアート的。現実離れしていて美しい寓話という雰囲気もある。
主演のエディ・レッドメインが神がかった美しさと儚さを表現し、その夫を支える妻役の力強さも素晴らしかった。
何度も出てきた風景画の場所にいくラストシーンも、本当に美しいっていう感じ。

ただストーリーが重く切な過ぎて、いい意味で映像美どころではなかった。
ポリコレ文脈でLGBTを語るのは食傷気味だけど、トランスジェンダーとしての苦悩・それを受け入れる苦悩を2時間の映画でここまで悲壮に描かれたらどうしても同情してしまう。
映像の美しさに加えて劇伴がずっと良かったな。

あと驚いたのは男性器を割と映してるところ。おっぱいはよく出るけど男性器が映画に出てるのは初めて見たかも。
でも男性器があることを苦しく思い、切除へつながっていく重要なシーンだから必要だったんだな。
おっぱいを映すのもサービスとしてではなく「女性の体の象徴として」「身体は男性であることを浮かび上がらせるために」っていう意図があったから納得感あったし。

総じて言うと、色々物事は進んでて映像的な情報も目を引くシーンも多くて密度の濃い映画なんだけど、静かに淡々と進む暗いストーリーではあるので見る側も消耗するというか。じんわり心を削られるというか。
目を離せない映画で深く印象に残ったけど、しんどくてもう観ないだろうな。

にしても、トランスジェンダー役を性自認一致の俳優が演じたから批判されるっていうのが本当もう嫌になる。
自分ではない存在を演じるのが「役者」なのに。
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