ビターチョコ

息もできないのビターチョコのレビュー・感想・評価

息もできない(2008年製作の映画)
4.0
数年前に観た映画。
雑誌で高評価なので観た韓国の映画。
韓国の庶民の暮らしが(少し)わかった気がする。

私は韓国映画は、めったに観ない。
高評価のだけ観るが、傑作が多い気がする。
そして、この映画も「観て良かった映画」の1本だ!

では、ネタバレ進行で!!!

●あらすじ
やくざな仕事をする、低学歴の若い男がいた。家庭環境が悪いが、賢明に生きる女子高生がいる。そんな2人が出会って……。

主人公は2人。
男はチンピラだが悪い奴じゃない。女性を殴ったりレイプしたり詐欺などはしない。だが、通りすがりの男を(気分で)殴る蹴るは当たり前で、いわゆる人間のクズ。
映画の観客は、彼の内情を知っているから、彼に同情するはずだ。しかし、そうじゃないなら、すごく迷惑な奴だし、憎しみの対象でしかないだろう。

一方の女子高生は勝気で、そして家庭が貧乏だ。学校に友人がいないし、教師からも誤解されて酷い扱いを受けている。しかし、とても誠実で、とても優しい女の子だと思った。だがそれも(映画を観て)内情を知ってるからで、知らなければ同情しない気がする。

そもそも、人間なんてろくなもんじゃない。
それを実感してしまう映画。
だが、とても良い映画だった。
観て良かった。
暴力的で悲しい映画だが、ある意味でハッピーエンドだった。

●余談
たぶん、女子高生の弟は犯罪者になり、そして姉を苦しめるだろう。なんて、そこまで考えると嫌な気分になるが、それは私の考えることじゃない。「勝手にしてくれ」である。

教訓は嫌いだが、書くとすれば、「貧困は人を苦しめる」ということかもしれない。「お金が全てを解決してくれる…かもよ!」というのがテーマの映画かもしれない。
だが、テーマは観客の各自が自由に受け取れば良いことで、作り手側が決めることじゃないだろう。

●さらに余談
日本では、ジブリのアニメーション映画を大人が観る。ジブリアニメは児童文学や少女マンガの原作が多い。悪く言えば「お花畑の人向け」で「生活費に困ったことのない人たちが観る映画」だろう。
【少女マンガが原作のジブリアニメ】
・耳をすませば
・猫の恩返し
・コクリコ坂から

だがこの『息もできない』は、お花畑の対極にある映画だろう。もし、インテリの高畑勲監督が観たら、大絶賛するかもしれない。だが高畑氏の現実は、親が高校の校長で、自身は東大仏文科卒というインテリ。貧困とは全く縁がない人の印象(実際は知らない)。