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夕凪の街 桜の国のsingerのレビュー・感想・評価

夕凪の街 桜の国(2007年製作の映画)
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実は、「この世界の片隅に」を自分はまだ観てません。
その理由は、この「夕凪の街 桜の国」に思い入れがあり過ぎて、
それを越えられるような複雑な気がして、
なかなか気が進まないというのがあって。
でも、とても興味はあるし、
レビュアーの方々の評価もとても高い作品なので、
いつかは観る日が来るんだろうなとは思うけど、
その日までは、少しこの複雑さを楽しんでるような感じですね。

この作品は、いい作品という事以上に、
今では、いつも自分の心の奥底に共に在るというような、
そんな生き方に対するの信念のように、ずっとずっと残っている作品です。

そんな、自分の思い入れをどう思うかは別として、
まだ幼い自分の娘たちには、いつか観て欲しいと思う、
そんな心から伝えたい映画のひとつですね。

以下は、2008年の5月に初めて観た時にブログに書いたレビューです。

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とても良い作品でした。
有意義な時間を与えてくれる、素晴らしい作品だと思いました。

時が経てば、嬉しいことも悲しいことも、少しずつ忘れ去って行く。
正確に言うと、忘れるというより、記憶の片隅に追いやられて、
思い出したり、考えたりする頻度がどんどん減っていく。
その中には、結構大事なものもあったりする。

自分も数年前に広島を訪れたことがあって、
平和記念公園、資料館、原爆ドームを見て回ったことがあって、
その時思ったことがいろいろありました。
それは、目を覆いたくなるものというのとは違って、
初めて自分の目で見て、自分の生まれた国で起こったこととして受け入れようとしたこと。
自分が生きる現代の平和がいかにして築かれたものなのかとか、
自分がここに来た意味とか。
何かしら沢山思うことがあって、
ちゃんと足を運んで来て良かったなと思えた覚えがあります。

その時思った気持ちは、長い年月が過ぎて忘れてしまっていたのですが、
この映画を見て、また心の片隅から持ってくることが出来たと思います。
だから、自分にとっては有意義に思えました。

そして、この作品のテーマが平和への祈りと、
それを思い続けることということなら、
自分もそれを受け取ることが出来て、素直に良かったなと思えました。

各映画賞でも評価の高かった麻生久美子の演技も、素晴らしかったです。
この人、最近だと「時効警察」のイメージが根付きつつある感じなんですけど、
そのイメージを払拭して、病に倒れる主人公の儚い一生を真に迫る演技で表現出来ていたと思います。
何故アカデミー賞にノミネートすらされなかったのかが不思議な位。
彼女の演技が無ければ作品のクオリティが大きく落ちてしまい、
テーマも霞んでしまう。
それ位重要な役に対して、これ以上無い成果を残せていると思いました。

今の自分が在る、そのルーツには、両親やおじいちゃん、
おばあちゃんが居て、もっと遡って、
いろんな人の思いや行動が自分の存在に繋がっている。
そういうものに励まされるような、そんな作品でもありました。

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初めて観た時から、もう十年余りが経ちましたね。
自分はこの作品を観る度に、数年前の六月に亡くなった祖母の事。
そして、父や母や、弟や妹、妻と娘たち。
そんな、家族の事を思い出します。

これからも、何度も繰り返し観るんだろうなぁ。
後、広島にもまた行きたいですね。

「この世界の片隅に」を観る前に、もう一度この作品を見ておきたくて、
今回また数年ぶりに観たんですが、
これで少し、冒頭に書いた心の複雑さが緩和された気がするので、
近いうちに観てみようと思います。
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