こたつむり

ファイト・クラブのこたつむりのレビュー・感想・評価

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)
4.8
生きることとは何なのか、を痛烈に問いかけてくる衝撃的な映画。名作。

この作品が90年代の最後にやってきたのは、色々と示唆的でした。息苦しさを感じていた世相に風穴を開けた問題作だったと言えましょう。これが数年遅れていたら…そう、アメリカ同時多発テロが先に起きていたら…作られたかどうか分らないと思います。
というのも、ここで言及されているのが衣食住に事足りている層へのメッセージだからです。
日々生きることに精一杯な人から見れば、主人公の悩みなど箸にも棒にも引っ掛からないのだと思います。

ただ、野性を削られた現代人の末席を汚す身としては、主人公の悩みが痛切に分かるわけです。
僕も若かりし頃は、こんな世の中にポイズン、と一人拗ねていましたからね。
そういう生の実感が無いままに悶々としている人たちにはガツンと来る映画なのです。
逆に言えば、既に守りに入っている大人には訴求しない映画だと思います。
守るものがある、ということは最高に幸せなことですからね。
そういう意味では結婚するまでに観ておくと良いと思われます。

…守りに入っている大人からすると眉を顰めてしまう映画ではありますが、これも仕方がない話です。
『大人』というものは本来そういうものだからです。
寧ろ、『大人』が賛同する暴力性には何か裏がある、あるいは、『大人』だと思っていたが実は違うのでは?と疑う必要があります。
若い人たちから見たら分からないかもしれませんが、いずれ分かる時が来ると思います。
なので、暴発せずに反発いたしましょう。
本当の『大人』だったら生温かい目で見守りながら叱責してくれると思いますから。

そして。
本当に守るものが出来る前に。
是非とも、この映画を観て脳みその中に風穴を開けていただきたい、と思います。

あまりに衝撃的な作品過ぎて、おちゃらけたことが書けないです。個人的には『時計仕掛けのオレンジ』以上の衝撃度でした。どんなに頭がおゆるりな人でも、生を実感するような衝撃があると襟を正す、ということなんでしょうね。あ。だからと言って僕に暴力は振るわないでください。暴力反対。暴力反対。ぼ
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