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気狂いピエロのsabayamatのレビュー・感想・評価

気狂いピエロ(1965年製作の映画)
5.0
レビュー1作目
キーワードは、逃避行
あまりにも素晴らしい映画が多すぎる中でどれからレビューを書いていいか迷った時の、ゴダール。
ゴダールはサブカル女子、意識の高い映画レビュアー御用達の難しいアート系映画と揶揄もされるけれど、この気狂いピエロは中々に分かりやすい。
何しろ僕が初めて見たゴダール映画は中国女であって、唐突に始まる毛沢東語録の一節の数々には辟易したものである。
この気狂いピエロ、あらすじは省くが結末としてはアンナカリーナの魔性の女っぷりが見て取れるというか、ずばりアンナカリーナに恋する映画である。
そしてゴダールの天才的な編集センス(今となってはもはやそれはスタンダードかもしれないが)。
例えば50メートル離れた所からこちらへ向かってくる人間、これを30秒かけて撮影した映像を彼は5秒に圧縮するのだ。決して早回しというわけではなく、飛ばし飛ばしに、さながらキング・クリムゾンのように時を吹き飛ばしながら5秒に圧縮する。
また、劇中にマフィアから逃走するシーンがあるが、ここの編集も一見するとかなりおかしい。
この可笑しさが観客を画面に惹きつけ思考する余地を残し、滑稽な印象を与え、物語のナンセンスさ、エスプリ、ブラックユーモア、はたまた詩や文学の引用、何やらよく分からないものたちが大きな印象として脳裏に焼き付いていくのだ。
何やらまとまらないが、僕はこの、人を馬鹿にしたような展開や、逃避行という行為が好きだ。そして、この映画には間違いなく観客に深い「印象」を与える力がある。
そしてここまで読めば分かるかもしれないが、私はこの映画を暇つぶしとして見る分にはまったくおすすめしない。
PS. 僕はYMOのゴダールにちなんだ楽曲三部作でこの映画を知ったのだけれど、このゴダール三楽曲のカラクリもまたなかなかに面白いので、研究してみるとゴダールもYMOも好きになれます。
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