恥ずかしながら初めてのジャン・グレミヨン作品。大変面白かった。無くは無い物語なのにどうしてこうも面白いのか。シュジー・ドレール演ずる愛人は日本なら若尾文子がやったら良いに違いない。彼女を囲う禿げ散らかしたフェルナン・ルドゥー演ずる魚売りは小沢昭一あたりでどうか。
関わる人物全員不器用でどこか歪で、相手を騙しとおせるほどの悪人にもなれない。狂騒のカドリーユと暗闇の断崖とのカットバックで急激に緊張を増す。妄想の舞踏会のワンシーンのためにシャンデリア満載の装置を用意しており狂気じみている。
しかし城内に掲げられた「汚れよりも死を」という紋章の言葉に背き、汚れと罰を受け入れるラストとなる。