アーリー

コッポラの胡蝶の夢のアーリーのレビュー・感想・評価

コッポラの胡蝶の夢(2007年製作の映画)
3.7
2023.4.14

前作から10年ぶりの作品。
今までのコッポラ作品とは違う、かなり幻想的でアートチックな映画。

雰囲気は真面目でアート感あるけど、展開はかなりトンデモな作り。70歳の老人が雷に打たれて、奇跡的に生存ししかも若返り、さらにはもう一つの人格が増えて、極め付けには超能力を手に入れる。完全にB級映画のノリ。それかコメディ。でも全然そんな感じじゃない。作品内の雰囲気はしっとりしてて、ゆったりで、まさに映画って感じ。ハリウッドではなくヨーロッパ。
 胡蝶の夢という邦題やけど、原題は若さのない若さ。同名の原作があって、一応その中で胡蝶の夢に触れられているらしい。確かに夢のような話。特にヴェロニカがこれまた雷に打たれて、1400年前のインドの女性ルピニが転生するところとか。そしてその彼女が夜毎に過去の人類の言語を話出し、それがドミニクの生涯完成しなかった研究を完成に導く内容という。ドミニクからすればいいことづくし。ヴェロニカが過去に愛した女性、ラウラにそっくりなのも、ドミニクの願望が具現化したような表現。胡蝶の夢で荘子は、蝶になった夢を見たが果たして自分は人間か、それとも蝶が夢を見てる時の人間の姿なのかと考える。話のオチは、結局人間だろうが蝶だろうが関係なく、それぞれに人生があるのだから、それぞれが満足のいくように生きれば良いとのこと。夢が現実かなんて関係ない。今作も結局夢なのか現実やったのかわからんまま終わるけど、多分どっちでも良いんやと思う。大事なのは、一度は研究を優先してラウラを失ったドミニクが、研究を捨ててまでヴェロニカを優先したこと。仮にヴェロニカと出会う世界が夢やったとしても、それはそれでよかった。現実では得ることができなかったことを、夢で得ることが出来た。それだけでもうめでたしめでたし。

ティム・ロスの老人の演技が良かった。見た目は若返ってても、もともとは70代のおじいちゃん。歩き方がそれのもので細かいなぁと。まぁ後半は普通に歩いてたけども。バラのくだりはなんやったんやろう。3本目のバラを置くのはどこ?出した答えは自分の遺体。花言葉とか調べたけどちょっとちゃう感じやしわからん。

前半が少し退屈で、実は寝落ちしてしまった。ただそこからが凄い面白くて、昨日と今日で全然作品の評価が違う。邦題がなんかダサいけど、胡蝶の夢というワードがあるかないかで今作に興味持つかどうか変わる気もする。色々考えた上でのこの邦題なんやろうな。現実も夢もどちらも一緒。それぞれの場所でしっかり生きれたらいい。夢を見ることは最近なくなってきたけど、もし見れたら夢ノートみたいなん作るのもありかな。どっちの世界でも頑張ろ。
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