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マン・ハントのroppuのレビュー・感想・評価

マン・ハント(1941年製作の映画)
2.0
ドイツ(バーバリア?)山奥の針葉樹林に在る沼、霧が出る森林、在るんだろう、おそらく。

冒頭からサスペンスの色が濃く、向けられた銃口のその先、それが彼を殺そうと追走し、そして挙げ句の果てには世界大戦へと導くきっかけへと政治戦争化させようとする。駆け抜けていく逃亡劇、これはフリッツ・ラングの取り上げるテーマとして重要なのかもしれない。

それは、今テーマを表層する物語に、反ナチス性、そしてそれを取り巻くただ一枚の外交政治の官僚的書類があるからである。奪われた人間の自由、そしてそれを無意識から意識させていこうとする行為。

しかし、権力至上主義の刑務所奴隷からの逃亡劇に活躍する男が、そもそも外交の手段となるようなモラルの欠けた資本家出身であって、家父長的な態度を取るように女性にブローチを買ってやるなどと言うのは、反権力主義の僕としては、ちょっと違うかなと思う。
そこの批評をなしにして、これなのはどうなのかなと疑問する。


『メトロポリス』もまた、事務官僚、資本主義、ありとあらゆるヒエラルキーという権力が機械文明という形を取って、人間という歯車を動かすような形態を取っている。そして、事務官僚的な機械化された人間の中にも、生が必ず在るような、そんな希望と絶望とが混在するテーマはよく見られる。

今作の場合はラストである。今作品中最も人間的な感情で、最も市民的なモラルを爆発させる。
逃亡中も、家族との面会も、女性とのやり取りの間でも、または追跡者との追いかけっこの間でも、一切感情が露わにならなかった人間が、この時だけは!大声を挙げずにはいられないのであった。ここにハイライトがある。

しかしそれ以外、すでに書かれてきた権力物語のなぞり書きというものに仕上がっている。
作家がハリウッドだったからこそ描けたテーマであったが、描こうとする形態に奪われたという皮肉が見えると言ってもいい。
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