LEO

友だちのうちはどこ?のLEOのレビュー・感想・評価

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)
3.8
友だちのノートを間違って家に持ち帰ってしまった少年が、ノートを返すために友だちの家を探し歩く物語。
イラン映画初めて観たなぁ。

全編を通して高圧的な大人達と周りを思いやる純真な子供達の対比でストーリーが進みます。
「社会のルールを守る大人に育てる為に」を名目に必要以上に高圧的な教師。
子供の話を全く理解しようとせず、とにかく宿題をやれ!と言いながらアレコレ雑用を押し付ける母親。
これまた子供の話を聞かず、躾だと言いながら意味のない使いっ走りを強制する祖父。
人のノートを勝手に破いて使っちゃう見知らぬオッサン。
最初は優しいものの、歩いている最中延々と自分の自慢話しかせずに疲れたら勝手に帰れという初対面の爺さん。
とにかくイライラする大人ばかりで、今の人達が見たら「なんて酷い人達なんだろう。イランってこんな酷い国なの?」なんて思うかも知れないけど、昭和の中頃まで日本にもザラにいましたw
決して馬鹿にしている訳でなく、現状日本とは40〜50年の差があるんだなぁと…。

とにかく終始イライラするし話の展開が単調なんだけど、気が付いたら不思議と飽きずに引き込まれてしまっているのが凄い。
少年の顔を隠し続け、目当てのムハマッドを見つけたかと見せ掛けるとかね、演出が素晴らしいんです。
この監督、職業俳優は使わないらしいんだけど、いわゆる素人達にこれだけの自然な演技をさせるなんてどうやってやるんだ?

あとね、画が抜群に良いです。
時には遠近の対比を一つの画面に捉え、時には明暗を対比させて必要以上の物は隠しながら人物を移動させる。
構図が完璧で絵画的なのは、さすが元グラフィックデザイナーというところか。

漫画原作で一部の偏ったタレントばかり使う今の邦画界には、爪の垢を煎じて飲め!って言いたくなる映画です。
LEO

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