ベビーパウダー山崎

エレファントのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

エレファント(2003年製作の映画)
3.5
かき集めた素人のリアルさ(棒読み)込みで地獄の惨劇を見せていくガス・ヴァン・サント。フィクションだからこそ、身体に染み付いた本物の匂いを大切にしている作家。死は演技だとしても、そこに至るまでの「日常」の生々しさ。銃撃戦というか虐殺だが、はじめに一発「パン」と人を撃ち抜いてから、その撃ち殺す少年を映し続けているのが良い。そこで全体を見せてしまうと意味が生まれ、アクションになってしまう。殺される悲鳴のみ。これでいこう。なにもない空っぽな映画の恐ろしさ。
たしか、今は亡き渋谷の映画館で公開時に見たのが最初。あのころヴァン・サントは渋谷の単館上映御用達の作家だった。その渋谷のノスタルジア含めて今でも噛みしめればしっかりと味がする映画。
アラン・クラークやハネケをパクるなら、これぐらい自分のものにして図太く表現するべきという教えがある。描きたい題材(原作)と同性愛と元ネタ(パクリ元)、この三本柱を組み合わせてオリジナルの「アメリカ映画」を創り出すヴァン・サント。錬金術師みたいなものだが、これはこれで確かな才能。映画の構成が『71フラグメンツ』に似ている映画として本作と橋本忍シナリオの『七つの弾丸』、この三本立てオールナイト上映を希望。