Ricola

天使のRicolaのレビュー・感想・評価

天使(1937年製作の映画)
4.7
ルビッチ監督のおしゃれでちょっと風刺の効いたラブコメ。

マレーネ・デートリッヒが「天使」のように美しくて愛らしい女性を演じる。


映像からも気品あふれるおしゃれさを感じる。
特に冒頭の窓の外からの流れるようなショットが素敵だった。


個性的な執事たちの会話が笑える。
ビリー・ワイルダーの「麗しのサブリナ」の召使いたちの会話も、ここからインスピレーションを受けたのではないかと勝手に解釈してみると面白さが増す。

彼らの様子から微妙な三角関係の穏やかでない過程がわかる。 
3人の食べ残しから推測する、彼らの感情表現は見事だと思う。

そういった、見せずにしていかに見せるかという表現力には感激してしまう。

他にも公園での花売りの女性の表情からわかる状況描写なども、対象を見せないのに間接的に状況がわかるというのが面白い。

二人の思い出の曲のときの気まずさなど、3人の俳優たちの微妙な表情による空気作りもとても巧み。

そして二人の男から「天使」と言われるのだが、彼女はそういった非現実的存在に近いような手の届かない存在に果たしてなりたいのだろうか。
そこに彼女の寂しさを感じる。

健気で芯のある女性をデートリッヒが演じたことで、より彼女の魅力が引き出されていたと思う。

先が読めない展開だが、なぜか安心感はそこまで失われない。
優しい着地点にもつい顔が綻んでしまう。
ハラハラしたりキュンとしたり、3人の男女の思いにそれぞれ感情移入できる上に的確でおしゃれな表現に感動してしまう、そんな作品だった。
Ricola

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