愛がなんだのRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

一方通行の恋って苦しいだけのはずなのに、相手の気まぐれとほんの少しの優しさが中毒になってしまい、やめられない…らしい。
まさにこの映画の主人公のテルコはそうであって、マモルという男性に自分の時間も心も費しひたすら振り回されていく。

会社でコーヒー占いをして彼からの連絡がくるかを見る。シャンプー中でも電話に出て彼のもとに飛んでいく。テルコの生活はマモルに支配されてしまっているのだ。彼の言うままに、ただ今を楽しむことに注力してしまい、彼女は自分自身をも見失う。


こんなにも大好きなのに全く振り向いてくれないマモルは他の人に好意を抱いている。マモルのそばにいるために、マモルの好きな年上女性のすみれと一緒にいるところでも彼女は行く。それでも自分に嘘をつけず、夢を語る過去の自分までをも否定してさらに珍しく毒を吐いていたら、さっき言われたマモルの言葉が突如目の前に壁のように現れる。テルコは自分のために行動することができなくなっているのがわかる。

テルコの親友のヨウコとはテルコと真反対のタイプである。代わりにヨウコと曖昧な関係の仲原はテルコと似ている。
すみれが仲原のヨウコとの曖昧な関係を責めていると、誰も何も言えない。なぜならマモルもテルコもそうだから。仲原は反論するものの、すみれの言葉が刺さって浸透してしまう。

後半、登場人物の名前が真っ暗な画面にひょっこり出て、ひとりひとりにフォーカスされる。それぞれの人物像がテルコとの会話を通して解像度を高めて映し出される。それぞれの恋なのか愛なのかわからない形や関係における思いが明かされる。お互い楽しくて満足していればいいのかもしれないが、そんな双方が納得している関係なんて、曖昧な関係でなくても恋愛関係において難しいのかもしれない。

マモルがテルコとの関係を清算したいと話したあと、具合悪いテルコのために作ったうどんを一口ちょうだいと言って、「やさしい」とつぶやく。なんて残酷なんだよ。

テルコのマモルへの思いはもはや狂気なのだと思うが、この思いを理解できる人ってどれくらいいるのだろうか。執着という言葉で片付けていいのかもわからない、テルコの心の内を共感できなかったけれど、マモルが何気なく言った「夢」をテルコだけが大事にしていることがラストシーンに明かされ、もしかしてこれって愛なんじゃないかとまた心の中で葛藤が生まれた。