YasujiOshiba

ミッションのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

ミッション(1986年製作の映画)
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DVD。やっぱりブルーレイを買っておくべきだったか。でもまあ、この「HDニューマスター版」もそんなに悪くはない。お目当てのモリコーネのスコアも、美しくも残酷な映像とあわせてばっちり聴くことができた。胸をガッツリ掴んで揺り動かされた感じ。みんなが褒めるだけのことはある。

なにしろこの映画、じっさいには150年ほどかかった布教の歴史をオーボエのメロディーだけで表現してしまうのだけど、そのメロディーがモリコーネの手にかかると、魔法のような説得力を持つのだからたまらない。

それもただ美しいだけじゃない。なんども繰り返されるこのテーマには、背景に森のリズムを感じさせるグアラニー族のパーカッションや、スパニッシュギターや、教会的なコーラスセクションが重なってくる。映画のサウンドトラックには、実にさまざまなスタイルの音楽が混じりこんでいるのだけれど、それが実に映像物語にばっちりあっている。

まさに映画のための音楽でありながら、それ自体で聞いても、どこか遠くの世界の美しさを感じさせてくれる。音楽だけでなりたってしまう。そこがモリコーネなんだよな。

とりわけサントラの1曲目「On earth as it is in heaven」(実際には『ガブリエルのオーボエ』で知られる音形にさまざまなリズムやメロディを重ねて作る音のコラージュ)なんて感涙もの。映画を見る前から知っていたんだけど、やっと作品を見て、ますます好きになってしまった。そういう意味では映画音楽なんだけど、映画を超えて残ってゆくのだとすれば、モリコーネ音楽でもある。
https://music.apple.com/jp/album/on-earth-as-it-is-in-heaven/714408074?i=714408593

そういえば映画の中にもそんなセリフがあったな。あのイエズス会士たちは亡くなったけれど、生き残ったもの心のなかに永遠に残る、そんなことを言ってよね。

良い悪いは抜きにして、文明というのはこういうことをやらかすんだよね。『キリング・フィールド』(1984)もそうだった。そのどうしようもない残酷のなかに、それでも残るものがある。偽善といわれようが、お涙頂戴といわれようが、そこを残るものとして描くのが、おそらく人間の歴史とともにある物語(イタリア語にすればどちらも storia )なのだろう。
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