アルカード伯爵と名を変えてアメリカにやってきたドラキュラ。
富豪の娘ケイと結婚したが、彼女の目的は…。
『魔人ドラキュラ』『女ドラキュラ』に続くユニバーサル製『ドラキュラ』映画の3本目。
前2作はロンドンが舞台であったが、本作品ではアメリカに舞台を移しており、シナリオもオリジナルになっている。
あと、パッケージあらすじではヒロインの名前がキャサリンになってるけど、字幕ではケイになっていて、例によってどっちが正しいのか分かりません。
とりあえず、ケイとしときます。
今作はアルカード伯爵と名乗るドラキュラ役はロン・チェイニー・Jr.で、同じユニバーサル映画の『狼男』が有名ですね。
啖呵を切っている時などはそれなりに貫禄があります。
だが、先代ベラ・ルゴシの妖しい気品には程遠く、なんともヒトのよさそうな筒井康隆みたいな雰囲気です。
名前の「アルカード」というのは"ALUCARD"。
逆さに綴れば"DRACULA"ってことです。
原題は『SON OF DRACULA』(ドラキュラの息子)となっていますが、邦題の『夜の悪魔』の方が本編にはあっているような気がする。
というのも、ロン・チェイニー・Jr.扮するアルカード伯爵はドラキュラの息子ではなく、よって原題は偽りということになる。
また、本篇での事実上の主要人物はルイーズ・アルブリットン演じるケイと、ロバート・ペイジ演じるその恋人フランクです。
この映画のヒロイン、ケイもドラキュラに狙われる。
しかし実はこの女がとんでもない悪女で、物語は思わぬ方向に展開してゆく。
ドラキュラ映画初の悪女ものであり、タイトルの『夜の悪魔』は、ドラキュラよりこの女にこそ相応しい。
この映画は、怪奇色というよりは愛憎劇の向きが強い。
また、今までの作品と違い何故かコメディ風味が漂っているのだが、最後のシーンあたりはシリアスである。
そして「吸血鬼」という存在の扱いが軽く、「忌むべき者」という要素が全然無い。
逆にその不死者としての体質を利用して「幸せになろう」という、吸血鬼映画としては異端である。
他にも、アルカードという名前、ドラキュラが蝙蝠へと変身する初のショット、陽の光の下白骨化する初のショット等の、初物尽くしである。
まぁちょっと情けないドラキュラを観たい時にはちょうど良い映画かと。