よしや

シェルブールの雨傘のよしやのレビュー・感想・評価

シェルブールの雨傘(1963年製作の映画)
4.2
台詞全編が歌で構成されるフレンチミュージカルの名作。ララランドの元ネタ的作品でもあって色鮮やかな画面に彩られた悲劇的な愛のストーリー。

ストーリー自体はシンプルで通行人が突然踊り出すようなミュージカル的な派手さもなく、ただ登場人物による心情が歌い上げられる、それだけなのだけれど、その分余計に観る人にとっては戦争による陰と引き裂かれた2人の存在が大きく感じられる。

とにかくヒロインであるカトリーヌ・ドヌーブが美しい。金髪と透明な白い肌、その悲哀に満ちた表情に見惚れる観客がいないだろうか?

ギイとの別れが決まった時の2人の移動シーンを画面が滑るように見せたり、ギイ不在のシーンでいっさいギイの状況を写さなかったりと演出も優れていて、さらに台詞が全て歌でしっかりと音楽がついているのだけれど、ルグランによるその曲たちは明るいがどこか物哀しい。

ラストも白い雪が降る中でハッピーエンドのように幸せそうに終わるのだけれど、観客は誰もが幸せの影にある種の後悔と強がりを見ずにいられないでしょう。
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