emily

闇の列車、光の旅のemilyのレビュー・感想・評価

闇の列車、光の旅(2009年製作の映画)
3.9
ホンジュラスの少女サイラは父と叔父と一緒にアメリカへ国境越えして暮らす事に決める。メキシコから列車に飛び乗り、大勢の移民たちとアメリカを目指す。そこにメキシコギャングがやってきて銃をつきつけ、金品を奪っていく。サイラに暴行を加えようとする仲間に銃を振り下ろし殺してしまうカスペル。以前愛する人も同じように暴行の上殺されてしまっていた。カスペルを慕っていた幼いスマイリーには列車から降りるように言い、カスペルはそのまま列車に残る。ギャングから追われる身になる。列車ではサイラと徐々に距離を縮め恋に落ちるが。

一筋の薄い光を求めて闇の列車で命の旅をする壮絶ロードムービー。また旅に出る理由に生きるためという交わりはあるが、希望を求めてのサイラに比べて、カスペルは生きるためにほかに手段がないという、移民の闇と、ギャングとしてしか生きる道のない南米の現実をドキュメンタリータッチで描く。

生きるため生活のために、アメリカに夢を見て国境越えを試みる密入国者が今もなお居る。私たちが夢をもって大都会に行くのとはわけ違う。深い問題を淡々と描いた本作は、薄い一筋の光さえも簡単に壊されてしまうその現実をありありと心に染みつける。

子供の時から銃を持ち、仲間のために、そうして自分自身が生きるために殺す。善悪もつかないうちから、埋めつけられて生きるしかない現実を。

ただ私たちはそれを知る必要がある。
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