黒川

サスペリアの黒川のネタバレレビュー・内容・結末

サスペリア(1977年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

(途中)
リメイクの予習のつもりで観ようとしたけど、翌日の朝イチの回に滑り込むために途中で観るの辞めました。けどまあやっぱりいつ観ても名作で迷作。大好きな一本。生涯好きな映画に入るやつ。アルジェントとカーペンターは僕にとっては神です。

ダリオの演出する殺人の美しさは、模倣犯を生みかねない。そう僕の美大時代の講師は言った。
その通り、極彩色の殺人はとにかく美しい。最初の犠牲者パットが友人を訪ね、そのアパートでステンドグラスを突き破って死ぬ場面。三原色のガラスは友人に降り注ぎ彼女をも巻き込む。こんな殺され方なら本望だ。そう思えさえする完璧な殺人シーンがひたすら続くのだ。
死ぬのは美女ばかりだ。ダリオは彼のどの作品に於いても美に対して物凄い執着を見せる。それでいて、まるで美を恐れるかのようにそれを痛ぶり、挙句、残酷な方法でぶち壊す。そのえも言われぬコントラストがとにかく美しい。極彩色の作品は本作とインフェルノが顕著で、それ以前、それ以後は色彩は控えめながら、その耽美性にはいつも舌を巻く。いつも彼は美女を痛ぶり、それを我々に嬉々として子供のように無邪気に見せびらかしてくる。いつだって「こんなに美しいシーンを思いついたよ!」とでも言いたげなのだ。

物語は有って無いようなものだ。アメリカからの留学生スージーがドイツのバレエ学校で体験する気味の悪い事件の真相とは?と言うものだが、はっきり言って最後の30分にウド・キアが説明してくれるまで一切説明がなく、兎に角ひたすら殺す。時には見せしめのように、時に何者かへの供物のように、そして全く意味もなく殺す。意味深なシーンも大体意味を持たない。なんだよそれ。一体1時間何を観たんだ/見せられたんだ(しかも暴力性が心地よい)と思っていた矢先に都合よく説明してくれるウド・キアがいなければどうなるんだこの映画。そんなのありかよ。ちゃんと説明しろよと思っていたけど、ゴブリンがBGMでちゃんとところどころ"Witch"って言ってるんですよね。それで説明してるつもりかよ。「けして一人で見ないでください」というキャッチコピーはなんなのか、なんだったのか。全く怖くねえっていうかこれホラー映画なのか?勝手に怖がっとけ映画の中でも抜群に独りよがりで、しかしただただ美しい。ダリオ構文とでも言うのか、癖がありすぎて彼のファンでなければ面白くないと感じる人も多いだろう。だが彼のファンからすれば只管美しく残酷で甘美だ。恐怖というよりも、ダリオの美への畏怖を追体験するような映像を、我々は見せられているかのようなのだ。そんなわけでダリオは天才。だから早くサンドマン見せろ。ダリオもイギーも死ぬぞ。…マジで続報ください、お願いします…追加のクラファンやるならお金払うから…
黒川

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