たりほssk

愛と青春の旅だちのたりほsskのネタバレレビュー・内容・結末

愛と青春の旅だち(1982年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

再鑑賞です。以前見た時は、リチャード・ギアのかっこよさと、ザックとポーラの愛のハッピーエンドしか頭に残らなかった…けれど、今回は少し違いました。
一番印象に残ったのは、当時舞台となるシアトルという閉鎖的でさびれた環境において、若者たちが士官学校を社会的地位を上げるものとして捉えているその構図です。
ザックは娼婦たちが母親代わりのような状況で育ち、自分を取り巻く環境に嫌気がさしていて、そこから脱すべく士官学校に入ることを思い立つ。一方地元の製紙工場で働く女性たちは、その士官学校を卒業した男性と結婚することで(いわゆる玉の輿に乗って)、自分の社会的地位を上げようとする。

士官学校を卒業するためには13週に渡る鬼軍曹のしごきに耐え、必要な訓練をし、血のにじむような努力をしなければなりません。単に技術を身につけるだけでなく人としても向上しなければならないのです。最初は隠れてズルをしていたザックがだんだん目の色が変わっていきます。「他に行くところがない」と叫んでいた姿が忘れられません。最終的に自分本位だった彼は仲間のことも思いやることができるようになり大きな成長を遂げます。
ポーラはその彼をまっすぐに掛け値なしに愛します。ただひたすらにザックという人間を愛するのです。それはまるで宝石の原石のような輝きを放っていて、純粋に人を愛するとはこういうことなのだと教えてくれます。そしてその愛はみごと報われる。他方ザックとリネットの結末はあまりにも悲痛でした。ここまで明暗をはっきりと描き分けることに驚きました。やっと本当の自分を見つけることができたザックに未来を与えることはできなかったのか、と思いました。
が、このような重い結末を辿ることもある、それほどこの道は厳しいのだということを示しているのかもしれません。
本作は単なるラブストーリーだけではなく、格差という社会問題も描いた奥深い作品なのだと思います。
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