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太陽に灼かれてのblacknessfallのネタバレレビュー・内容・結末

太陽に灼かれて(1994年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

スターリン政権下のソ連。ミーチャという男が10年ぶりに元恋人マルーシャの家を訪ねる。
マルーシャは革命の英雄コトフ大佐と結婚し授かった女児を育て幸せに暮らしていた。
マルーシャからミーチャを紹介されたコトフは一瞬戸惑いの表情を見せ慌てて平静を装う。それを皮肉な笑みを浮かべつつも友好的な挨拶で返すミーチャ。

過去二人の間に何かあったことを匂わす前半。こう書くと不穏な感じの画っぽいけど、コトフはスターリン政権下の名士なんで広い庭と豪奢な家に住んでてメイドさんやら親類なんかもいて賑々しい。美しい自然に暖かな家族、カメラも演出も朗かさを強調してる空気の中であのやり取りが入る。
だから、観てる側も感じる仕組みになってるんだよね、これは平穏な日常に亀裂が入り、何かによってそれが破壊させる話なんだって。リリカルでうまい演出。

で、過去に何があったかなんだけど、これはかなりベタで俗っぽくそして普遍的なこと。愛し合ってたマルーシャとミーチャを有力な軍人だったコトフがミーチャを外国の諜報活動に出すように仕向け、二人を引き離し、消沈したマルーシャをもうアタックで口説きおとし自分の妻に。

そうミーチャは復讐しに戻ってきた。単なるメロ・ドラマな筋立てなんだけど、そこはロシアきってのインテリ監督だから、ドロッドロしたメロ・ドラマを展開させることで当時のソ連の独裁体制の恐ろしさ、抑圧された空気、そこから滲む滑稽さと愚かさも巧みに画き出してるんだよ。

ミーチャは秘密警察の敏腕諜報員でコトフにあり得ない反逆罪をでっち上げ逮捕しにきたことが後半で明かされる。
このミーチャの復讐は社会が狂ってないと成功しないもんなんだよ。国民を徹底的に監視し密告を奨励したスターリン政権下じゃなければ成立しない手口。
コトフは卑劣な奸計でミーチャから恋人を奪ったが、濡れ衣で死刑にしてもいいのか?ミーチャの始まりは完全な被害者だが権力機構を使って相手を陥れようとした瞬間からコトフと同類に堕ちてしまったんじゃないのか?
そもそも労働者達の安寧と幸福のために起きた革命の終着点が抑圧的で陰湿な一党独裁体制にならなければこんな虚しい愛憎劇は存在しなかったのかも?
美しいリリカルな映像から浮き出るやるせなさを堪能できる傑作。

そして、これ、驚くべきことに実話ベースなんだよ!コトフ大佐て人、本当に反逆罪で銃殺されてんだよ!家族も長い懲役に。「1936年銃殺」「1956年名誉回復」との文字がエンディングに!やっぱ冤罪だったのかと、ビックリ&やるせなさ数倍増しに、、😂

実は公開時、映画館で観たんだけど、このエンディングのテロップのことまったく記憶なかった。当時も出たはずなのに何故だ!?
おそらく、クライマックス以外アクションもバイオレンスもない展開に退屈して集中力切れだったんじゃないかと思う😂
今でこそ、傑作とか書いてるけど、当時はテーマわかるけど退屈だったぜーー!!て感じだったし。
もっと言うと観たくなかったんだよ笑 この時に付き合ってた女性がこーゆーの好きだったんで嫌われたくない一心で映画館へ😬💦
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