Kinako

病院坂の首縊りの家のKinakoのレビュー・感想・評価

病院坂の首縊りの家(1979年製作の映画)
3.9
 1976年に公開され、大ヒットを飛ばしたミステリー映画の金字塔『犬神家の一族』から始まる、名探偵・金田一耕助シリーズの第5弾にして最終作。「病院坂」と恐れられる、曰く付きの館で起こる殺人事件の謎を解き明かせ!!

 名優・石坂浩二演じる金田一はこの作品で一旦幕引きとなります。角川春樹事務所と東宝が手を組み、70年代日本を代表するシリーズとなっていた金田一耕助の物語を締め括るにあたり、当時の金田一シリーズの最新刊であった「病院坂の首縊りの家」を題材に、本作の製作が進められました。

 ポスターには「金田一耕助最大最後の事件」というキャッチコピーがあります。スケール自体は、それまでの『犬神家の一族』や『獄門島』と比べるとやや見劣りするかも?と思っていましたが、それは間違いでした。

 金田一シリーズ特有のドロドロとした愛憎渦巻く人間模様が今回は格別に複雑なのです。そして残酷極まり無い。犯人が犯行に至った過程と動機が哀しすぎます。仮に鑑賞中に犯人を予想できたとしても、その真相までは絶対に辿り着けないでしょう。

 本作は前4作までに無かった新しい要素が多くあります。例えば物語にジャズバンドがキーパーソンとして登場する事で、どこか洋風チックな雰囲気が漂ってきます。これまで戦後間もない日本が舞台だったという事もあり、なんだか新鮮です。

 しかも本作は、金田一の過去にも少し触れています。本作でもメガホンを握った市川崑監督は、一作目の『犬神家の一族』のラストで金田一が登場人物からの見送りを避けて帰るシーンは、「神の使いの様な無名な風来坊」である金田一の正体をバレない様にする為だとファンタジックに語っています。だからこそ、今回の金田一の過去は貴重なのです。

 
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