Gan

アモーレス・ペロスのGanのレビュー・感想・評価

アモーレス・ペロス(1999年製作の映画)
4.5
オクタビオも、バレリアも、エル・チーボも、本作の主人公格でありながら、一度も面識を持っていない(作中の事故で交錯するも、認識はせず)。
自分が作るとしたら、"トゥルーロマンス"よろしく、絶対にクライマックスで顔合わせさせたくなるに違いない。しかし本作の面白さの妙は突き詰めればここにあると思う。粋が過ぎる。

群像劇でありながら、その人間関係を犬が結んでいく。2時間半の長尺だったが、予想させない展開が飽きる隙を与えない。
少しづつ当てはまっていく物語のピース(時間軸がしばしば前後する)が「ここに繋がるのか!」という爽快感と驚きを伴うため、これも飽きさせない大きな工夫の1つだと思う。

エンドクレジットに、亡き息子・ルチアーノへ「我らもまた 失われし者ゆえ」という一文を送り、本作は終劇する。
ここでやっと、この作品は "喪失" がテーマの物語だったのか、と思い当たった。
思い返せば殆どの登場人物が、伴侶、目的、仕事、身体の一部、兄弟愛、娘、家族など、挙げ出せば枚挙に遑がないほどに、人生における大切なものを失っている。
その行く末に、希望の暗示は無い。
しかしハッピーエンドではなかったが、監督の以下のインタビューを発見し、少し救われた気持ちになれた。

「人生は失うことの連続だ。純真さを失い、子供時代を失い、青春や仕事、頭髪さえ失われていく。そしていつの日か、友人、両親、己の命にも天に召す瞬間が訪れる。人間という存在はそうやって“失ったもの”によって形成されるものなのだ」


エンドロールを眺めながら頭の中をゆっくり整理していく快感は、言い表せないものがある。
ひとりでじっくり観てほしい。

これからも時々思い出すであろう特別な映画。
Gan

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