亘

アモーレス・ペロスの亘のレビュー・感想・評価

アモーレス・ペロス(1999年製作の映画)
4.3
交通事故の加害者、被害者、目撃者それぞれの事故前後を描く群像劇。原題を直訳すると"犬のような愛"で、皆誰かを愛してるが問題を抱えている。

イニャリトゥ監督初の長編。「オクタビオとスサナ」「ダニエルとバレリア」「エル・チーボとマル」の3組の生活を描くけど必ず犬を飼っていてその犬も闘犬だったり穴に落ちた小さい犬に捨て犬でそれぞれの飼い主のキャラクターを端的に表しているし、それぞれの話の主題は事故直後を起点に過去・現在・未来で脚本がうまいなと思う。

過去:オクタビオは穏やかな青年だが兄のラメロは乱暴者で妻スサナに暴力をふるう。オクタビオはスサナを守るため闘犬で金を稼ぎ逃亡しようとするが彼自身が闘犬を通じて少し荒くなって本能に忠実になってしまった。一緒に逃げようとしたスサナは突然消えるしある闘犬の帰りにカーチェイスの末信号無視で車に追突してしまう。

現在:ダニエルはモデルのバレリアと不倫で同居中。バレリアは美脚を武器に仕事をしていたが事故で追突され脚に怪我をしてしまう。そんな中で床下に落ちた愛犬リッチーをめぐってダニエルと喧嘩になる。その後の不運もあって彼女はモデルの仕事を失う。この2人もまた浮かばれない。

未来:エル・チーボは元々服役していて現在は警察の人探しと犯人殺しに協力している。ある日事故を目撃しそこでケガした犬を救いさらに金まで得てしまう。彼は警察から与えられた仕事を遂行して人を殺すのかと思いきや改心して姿をすっかり変えて町を出ていく。ここだけどこか希望を持てた。

交通事故で全員が知り合うのかと思いきや全然そんなことはない。でもそれぞれのストーリーに顔を出していたりして面白い。みんな誰かを愛しているけどその愛は何か欠けている。"アモーレス・ぺロス(犬のような愛)"という題はそんなどこかいびつな、本能に任せたような愛を表しているんだろうな。

印象に残ったシーン:事故の追突シーン。オクタビオがスサナに言い寄るシーン。バレリアが広告の外された看板を見つめるシーン。エル・チーボが町を出るシーン。
亘