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バニシング・ポイントのroofbalconyのレビュー・感想・評価

バニシング・ポイント(1971年製作の映画)
4.4
「イージーライダー」とセットで語られがちな印象を持っているが、比べるとちょっと影が薄いのも込みで自分は本作が好み。☆は英国公開版への評価。

昨今のBDには完全版と呼ぶべき英国版が収録されているものと思い再見したが本邦版BDでは従来の米国版のみだった。繋がった状態で観たかったのだが。。
米国版でカットされたシーンは、ほめられた行為ではないが何気なくYouTubeで観てしまった。
デリートシーンを特典映像コンテンツなどで観たりすると概して蛇足と感じることも多いが本作のそれは他と違い、なんだってこんな重要でいいシーンをカットしちゃったんだ!?と愕然、且つそのシーンによって映画の結末にも得心がいき、自分の中では本作の格が上がった。

カットされたシーンは、シエラネバダを越えた西麓でシャーロット・ランプリング演じるヒッチハイカーを主人公が拾う件り。この人物は先行シーンに登場するヌードライダーと対になっていて、各々が生と死を象徴していることがわかる。
アンフェタミンらしき覚醒剤を服用して走り続ける主人公コワルスキーだが、前段でヌードライダーからのマリファナや肉体関係の誘いも断ったのに、ヒッチハイカーからは勧められるままにマリファナを喫ってその効き目から車を停めてしまう。謎めいた会話の後、コワルスキーは彼女にキスする。

道すがら出会う人々とのやり取りでコワルスキーの苦い過去や心象が引き出されてくる構成になっているので、その締め括りであるヒッチハイカーのシーンを削ったのは大変惜しい。

さは然りながら従来版の、アメリカンニューシネマによくあるラストでの唐突な破滅展開もそれはそれでよい。むしろ少々穿って観れば英国版のラストは予定調和的という見方も出来、ヒッチハイカーをカットしたことで衝撃度は増していた。
加えて倒叙形式で冒頭に終盤直前のシークエンスを置いているが、映画の時間軸がそこに追いついてもその一連を殆ど飛び越えてラストに向かうため、より唐突感が際立っている。
しかし冒頭ではコワルスキーが封鎖地点を迂回しようとするが一旦降車して少しの間逡巡してから取って返す場面があり、明確な意思決定感が実はある。切ない。

地理的考察(ロケ地とは必ずしも一致しない):
コロラド州デンバーからI-70でロッキー山脈を登る。風光明媚なコロラド高原と70年代初頭のおそらくは建設途上のI-70が見られる。ユタ州に入るが現在のI-15や80のルートは使わず、ネバダ州のベイスン&レンジに迷い込む。山師老人の給油とアドバイス(?)やヒッピーバイカーの助けでシエラネバダ東麓に至りカリフォルニアSR120で山越え。警察の電光地図によると最後の街の名はCiscoとなっている。シスコという地名は実際あるにはあるがかなり北のI-80沿いになる。架空の街としての設定か。SR120上の街でいえば現在のオークデール辺りになるのだろうか。スーパーソウルのラジオ局KOWはネバダ州ゴールドフィールド。
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