むっしゅたいやき

グッドモーニング・バビロン!のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

4.3
D.W.グリフィス、畢生の大作『イントレランス』。
「不寛容」をタイトルとしたこの作品が公開された際、W.W.Ⅰへの参戦気運の高まっていた米国内で、興行的に大失敗となってしまった事は、シネフィルならば誰しも知る所であろう。
本作は、そんな『イントレランス』への真摯な敬意を込めつつ、ダヴィアーニ兄弟流の「不寛容」を題材とした作品である。
パオロ&ヴィットリオ・ダヴィアーニ。

ダヴィアーニ兄弟の名作類には、キーマンがいる。
名優、オメロ・アントヌッティその人である。
父親役や、指導者役の多い彼であるが、本作でも厳格且つ古風、幾分意固地な父親役を演じており、役の雰囲気、会話の間に至るまで気が配られた其の名演は、チャールス・ダンス演じるD.W.グリフィスとの初対面を、決闘の様な緊張感溢れる物としている。
全般的に人物像、出来事の描写が飄逸な本作の中で、良い意味でスパイスとなっている場面であろう。

物語中、幾度も繰り返される言葉、「公平」─。
公平とは、自らが裁量する中で其の判断の脇に置く物であり、本来的に受動的な、運命や身の上に起こる諸々に公平なぞ望む術も無い。
其処に安定を求めるならば、“tolerance(寛容・我慢)”しか有るまい。
父・アントヌッティの云う「公平にな」は、同時に「寛容にな」でも有ると思われるのは、牽強付会に過ぎようか。

物語は、現実世界のニコラとアンドレアを枠内から外し、聖堂の彫刻を修復する過去の二人を映すショットで終わる。
“一心同体”を地でゆく其の姿とは裏腹に、私は其処にダヴィアーニ兄弟による幻の『Intolerance #5』を見る気がするのである。
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