緑雨

愛と誠の緑雨のレビュー・感想・評価

愛と誠(2012年製作の映画)
3.0
梶原一騎がど真面目に描き上げた昭和の劇画世界をこれでもかと脱構築。あの早乙女愛がイタさ満開の勘違い天然女としてキャラ構築されるとは!

「あの早乙女愛」とか書いたが、原作漫画は小学生の頃に断片的に読んだくらいでしか知らない。当時、連載が終わってから十年も経ってなかったはずだが、その前時代的な大芝居ぶりには子供ながらに違和感を覚えたものだ。その外れっぷりが、一周回って現代的解釈によるエンターテイメントとして成立するのだから面白い。

序盤、昭和歌謡曲による下手っぴミュージカルの勢いに圧倒されるが、市村・一青のシーンだけ突如オリジナル曲になったり、中盤になるとミュージカルシーンがぱったりと減ったりだとか、テイストが徹底されていないユルさも現代的である。

渾身の昭和の歌舞伎町再現は、どうやって撮ったのだろうと興味を惹かれたが、エンドクレジットのロケ協力に石和温泉の名を見つけ納得。「原価割れ、980円!」みたいな立て看板が使い回されているのが哀しみを誘う。
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