さろ

バベットの晩餐会のさろのレビュー・感想・評価

バベットの晩餐会(1987年製作の映画)
3.8
ずっと気になっていた作品がアマプラに追加になっていたので鑑賞。

デンマークの辺境にある海辺の街で、牧師である亡くなった父の後を担い、わずかな収入を頼りに地域への奉仕活動をしながら慎ましく暮らす姉妹のもとへ、パリの騒乱を逃れてバベットという女性が身を寄せてくる。召使いとなったバベットと姉妹との暮らしが14年に及ぶ頃、バベットの元に1通の手紙が届けられた…

作品の後半で繰り広げられる「バベットの晩餐会」で振る舞われる料理のおいしそうなこと。おいしい料理がいかに人の心と身体を安らがせ、解放させるのかということをしみじみと感じた。

バベットが晩餐会に掛けた思いを感じる最後のやりとりが素晴らしく、人間が(ただ息をするだけでなく)生き生きと暮らしていく上で何が必要なのかを考えさせられる。

ちなみにこの作品、北村紗衣さんの著書「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」で紹介されており、それを読まずに観ていたら、バベットの側にだけ注目して終わってしまっていたかもしれない。(作中のほとんどの時間は姉妹を描くことに費やされているにもかかわらず)

牧師であった父の抑圧のもとでの姉妹の選択や生き方、それがバベットとの出会いや最後の晩餐会を通じてどう変化したのか、映像に含まれるたくさんの要素を拾い上げながら作品が放つメッセージを読み解こうとするのはとても楽しい試みだった。
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