emily

シークレット・サンシャインのemilyのレビュー・感想・評価

4.8
シングルマザーのシネは、息子ジュンと2人で、亡き夫の故郷・密陽(ミリャン)に引っ越して、ピアノの講師として再出発する。引っ越し途中に手伝ってもらったり、何かと気にかけてくれる独身のジョンチャンをはじめ、近所の人達は優しくしてくれた。ある日ジュンが誘拐され、身代金の要求に全財産をはたくが、子供は無残にも殺されてしまう。その苦痛を宗教に没頭することで、なんとか乗り越えようとする。そうして犯人にも赦しを与えようと、刑務所を訪れるのだが・・

何も誰も信じないと決めたシネ、彼女が見栄を張ってついた嘘が子供を奪われる結果となって自分に降りかかってくる。

行き場を無くした彼女は皮肉にも、人を信じて生きていく道しか残されていなかった。夫を亡くしてから、人を信じないと生きてきた彼女は、全く逆の思考をもたなくてはいけなくなった。

そこから宗教によりどころを求めても、またそれを全部無にしないといけない現実が待っているのです。幸せな瞬間からまた突き落とされる描写が、瞬間に起こるので、目が離せないぐらいのめりこんでしまう。信じて裏切られる。貫いたものが無になる・・その描写は冷酷で、容赦ない。

またその瞬間を逃さない、役者の表情の変化も絶妙な空気感をもっている。特に犯人に赦しを与えるため刑務所を訪れてからの落胆、狂いっぷりの演技は圧巻。

神が人に与える赦しは平等である。それは犯人に対しても同じこと。しかしその救いは誰かにとっては全く逆に裏切りの行為になることもある。平等ゆえの矛盾・・宗教に対する矛盾を映し出している。それは否定している訳ではなく、一つの事実として語られている。ある意味キリスト教徒の多い韓国では挑戦的な態度ともいえる。

しかし、神とは空高くにあるものではなく、すぐそばにあるもの。そばで光ってるものの中にも神は居て見守ってくれているのだ。彼女のそばにもずっと見守ってくれる存在がいた。ずっと影で支えてくれてる人がいた。いつも大事なものはそばにあって、上ばっかり見てたらその存在に気が付かない。
家族を失って、信じる物を失って、何もなくなって初めてその存在の大きさに気が付く。
神とは誰のそばにもいつもいて見守っていてくれるもの。大事なのはそれを見つけること・・
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