しゃび

ソナチネのしゃびのレビュー・感想・評価

ソナチネ(1993年製作の映画)
4.5
死ねない男の物語。

北野映画の中でも最も生と死が近い関係にある作品ではないだろうか。
『その男、凶暴につき』は死が近づいてくる映画だったが、本作は生と死が相思相愛の関係にあるような感覚を受ける。

北野映画と海という死のフラグはそのままだが、無邪気に遊べば遊ぶほど、「生」自らがから死に近づいていく。

映画の作りとしても絶妙なバランスを保っている。叙情を強くし過ぎてしまうと、あざとさが見え見えになってしまう主題。基本的な叙情を廃したタッチに、スパイスとして上から叙情をふりかけている。

映画においてはじめと最後のシーンは重要である。
はじめのシーンで、久石譲の音楽に乗せて映し出される映像が、雀荘で牌を片付ける男という時点で、既にこの映画が並々ならぬものであることが確定している。



ネタバレ↓

印象的なシーン。
ケン(寺島進)が額を撃ち抜かれて殺されるシーン。
倒れるケンを目の前にして、身じろぎもしない村川(ビートたけし)。何故自分じゃないのかと考えているように見える。
直後のシーン、ケンが死ぬ直前遊んでいたフリスビーで遊ぶ村川。端から見ると、仲間が殺されたのに無邪気に遊んでいるように見える。だが、実際は同じことをすれば、自分も死ねるかもしれないという思いに駆られての動作のように見える。

無邪気さと死の関係が象徴的に描かれたシーン。
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