ひでやん

レクイエム・フォー・ドリームのひでやんのレビュー・感想・評価

4.4
鑑賞者の心を蝕むサイケデリックな映像遊戯。

ダイエットに励む母と、ドラッグを売りさばく息子の物語が並行し、そこに友人と恋人の視点が加わり破滅へと向かう。孤独な未亡人にはテレビに出演するという夢があり、息子には金を儲ける夢がある。

夏に夢咲き、秋に枯れ、冬を嘆くも春は来ず。永き悪夢の果てにあるのは幻想世界の鎮魂歌__移り行く季節の情景が、絶望の底へ堕ちる心を映し出しているようだった。

コマ撮り、ジャンプカット、俯瞰、回転、クローズアップ、スプリットスクリーンにホワイトアウトなど、まあ出るわ出るわの映像技法。「粉末」→「点火」→「血管」→「眼孔」を短いショットで繋ぐモンタージュが効果的で、幾度となく繰り返されるそれが静脈に突き刺さり、全身を駆け巡るような刺激だった。

打つ、打つ、打つ。そして鬱。まさに鬱映画。ドラッグがもたらす多幸感は知らない方がいいと思えたので、抑止力になる作品だ。

幻覚に恐怖するエレン・バースティンの演技がとにかく凄かった。序盤と終盤ではまるで別人で、何十歳も老けて廃人になったように見える迫真の演技だった。

人は皆、何かに依存する。例えば恋人、例えばテレビ。ゲームにスマホに漫画に音楽。趣味か娯楽か、依存か中毒か。そして自分は映画中毒。
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